1月22日、安倍首相とプーチン大統領の首脳会談がモスクワで行われました。同席したのは河野外相とラブロフ外相です。
この会談に先立って、14日に河野外相とラブロフ外相の外相会談が行われましたが、その会談でラブロフ外相は「先の大戦の結果、北方4島はロシアのものになった。そのことを忘れるな」と河野外相に述べたそうです。それは取りようによっては、「領土を返還したいなら、また戦争でやれよ」と言っているようにも聞こえますね。
ある意味においてそれは正確な歴史認識です。こうして人間は戦争を繰り返してきたのですから。
しかしこちらの言い分もあります。まず我が国は大戦終結期にポツダム宣言を受け入れ、全軍が武器を置きました。いわゆる停戦状態になったのです。
その時、占守島で突然ソビエト軍が日本軍に襲い掛かってきたわけです。仕方なく武装解除中の日本軍は再び銃を取りましたが、援軍もなく敗退し、そこからソビエト軍は南下し始めて、千島列島を蹂躙し、そして国後島まで進行してしまったのです。それは昭和20年8月28日のことでした。
8月28日と言えば、東京ではアメリカの武装した先遣隊が厚木飛行場に到着した日です。そしてその2日後の30日にマッカーサー将軍が厚木基地に降り立っています。
戦争終結は1945年9月2日。東京湾上のアメリカ戦艦ミズーリの甲板上において、日本全権団の重光葵・梅津美治郎の両氏とアメリカ軍ダグラス・マッカーサー 将軍等によって休戦協定に書名されたことを持って戦争終了となりました。
これで我が国の敗戦が国際法上確定したわけです。
ですからロシアの言う「9月2日の前は戦争中」との主張は間違いありません。しかし日本国民にとっては、昭和の陛下が行った8月15日の玉音放送を持って敗戦が決まったわけです。
全日本国軍は、命令に従って銃を置き戦闘を中止しました。その見事さは世界を驚かせもしました。そのことを良いことに、ソビエト軍が襲い掛かってきたこと、そのことに我が国民は怒り、北方4島は略奪されたと言い続けてきたのです。(日本ではこのソビエトのような行いを「卑怯な行い」と言います)
ソビエトはその後、この戦闘での日本兵捕虜をシベリアに送り、劣悪な環境下での強制労働を強いるなど、我が国が怒るのも当たり前のような仕打ちをしたわけです。
しかも捕虜を釈放するときも、共産主義を日本に広めることを約束させるなど、卑劣な洗脳工作まで行っております。
これらソビエトの行った行為で、戦後の日本国民はソビエトを敵視してきました。そのソビエトが地球からいなくなる1991年までずっとです。そしてその後のロシア共和国に対しても、いまだそれほどの友好感覚は無いようです。
戦争終結時には、このようなことはよくあります。そしてそれが次の戦争を引き起こすのです。いわゆる国民感情というやつです。ラブロフ外相はこのような意味で言ったのでしょうか・・・
今回の日露首脳会談の後の記者会見で、安倍首相は「 解決は容易ではないが、やり遂げなければならない。両国民が相互に受け入れ可能な解決のためリーダーシップを発揮する決意を確認した」と述べ、またプーチン大統領も「会談は非常に建設的だった。領土問題など解決は可能だ」と強調したということです。
さて、日露首脳会談と言えば先ず我が国は北方領土のことが報道され、それ以外のことは国民はあまり関心は持ちません。
日本国民があまりロシアを信用しないで、疑ってかかるのは恐らくこの終戦時のソビエトの行為にあるのではないでしょうか。
そしてそれこそ世界が利用できる日露間の心理的問題となるわけです。日露間がうまく行かないことは、中共にとって良いことであり、欧州にとっても「あのロシアと日本が手を結ぶ」ことはあってはならない事ではないでしょうか。
しかし、よく考えてみれば親日と言われる国家、アメリカ、英国、フランス、ドイツ、インドなどとの外交を見て、それほどロシアと違うでしょうか。
表面的に親日を演出はしておりますが、その実は形式が違うだけで日本に何かの要求を押し付けてきて
おります。フランスの日産に対する要求などでも、それが判りますね。
今回の日露会談ですが、マスコミが何と言おうと、また野党や自民党内が何と言おうが、安倍外交はうまくやったと評価するものです。
なぜなら、中露接近を遮断する可能性が出来てきたからです。ロシアの経済が、日露経済協力で少しでも上向けば、ロシアと中共はさらに離れると思います。
日露新時代。それはアメリカ・トランプ政権も含めた反グローバル政策の潮流を作ることが目的となるはずです。
英国ではブレグジット、フランスでは黄色いシャツ運動、ドイツではドイツの為の選択肢、アメリカはマスコミ対トランプ・・このようなグローバルと反グローバルのせめぎ合いが続いています。
ここで日露関係がきっちりと「反グローバル」を掲げれば、さらに強い潮流となるように思います。
次回は6月、大阪で開かれるG20サミットでの会談です。どのように進展していくでしょうか・・・
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