2016年6月13日月曜日

ケイコ・フジモリ氏、敗北宣言

ペルーで行われていた大統領選挙では、ペドロ・パブロ・クチンスキ元首相が0.3ポイントの極微差で勝利したようです。
現在も海外などの開票が行われていると言うことですが、ケイコ氏は0.3ポイントの差を埋めることは不可能となり、敗北を認めました。票差は4万票程度と言うことです。

4月に行われた選挙では、過半数にこそ至らなかったものの、かなりリードしていたケイコ・フジモリ氏でしたが、この2カ月ちょっとで何があったのでしょうか。

ケイコ・フジモリ氏は日経の3世で、アルベルト・フジモリ元大統領の長女に当たる方です。彼女が日系社会から支持を受けていたかどうか、どうやらそこに問題があったのかも知れません。

そこには父・アルベルトフジモリ元大統領への不信もあったようですが、約10万人ほどの日系社会も、すでに3世の時代。
日本への帰属意識はほとんどなくなり、「日系人の3分の1はクチンスキ氏に流れた」との分析もあるようです。
そのことを知っていたのか、5月に行われた日系社会の大集会に招待されたケイコ氏は、その集会への出席を断ったそうです。集会を開催した人は、多くの票がケイコ氏から離れたと述べていますが、日系を絶つという、そのくらいの覚悟を持って臨んだケイコフジモリ氏だったわけです。

「伝統的にペルーの日系社会は政治運動に消極的。フジモリ家との接点も少なくなっている」と述べる日系人も居り、アルベルト・フジモリ元大統領(77歳)を知らない若い世代も現れ、その数は増えているということで、「ケイコ氏はまだ若く、国の運営を任せられない」と述べる日系の女性も居るとか。

また、決選投票が決まったあとのインターネットでは「激しい“反フジモリ”キャンペーンが展開され、日系社会の若い層はそれに流された」という分析もあるようです。
これによってペルー社会は「フジモリ派」と「反フジモリ派」の2つに分割されてしまったと述べる人も居るわけです。

つまり、現在のペルーが抱えるのは経済問題。その政策が焦点になっているわけですが、どうやらクチンスキ元首相の掲げる政策の方が若者に受けたのではないかと思います。
ケイコフジモリ氏は、5月以降日系人社会の票を求めず、自身で貧困の打破などを掲げて経済政策を展開したようですが、その本質的な部分を日系の若者は見ていたことになります。

ペルーの抱える経済問題とは、新古典派経済学などの自由主義経済を放置しておくとこうなる・・というような明白な結果が出ている「恥の壁」という問題です。
これは、貧困のスラムから裕福層の住む地域へ入れないように、山頂に長く作られた壁を指します。貧困層の側から壁を超えると、山の下には裕福層の住む豪邸が立ち並んでいるそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=NEfBZ0OtRRA

このドローンを駆使した動画ではよく判りませんが、確かに壁の反対側は綺麗になっていて、その山裾の方に裕福な建物が少し見えています。
この問題をいつまで放置しておくのか、そこが今回の選挙の焦点だったようですね。

日系社会はおそらく裕福層に入るのでしょう。ですから「反フジモリ」と言うのは、日系社会は裕福層で、この貧困問題は解決できないという考えのグループだったのかも知れません。

では、いかにもスペイン系のペドロ・パブロ・クチンスキ元首相なら出来るのか、そこもまだ未知数です。そもそもこのような徹底的な格差社会を作った原因は、過去から続くスペインの「既得権社会」にあったのではないでしょうか。

ペルーの位置を見れば、周辺の国はボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドルです。いずれも貧困問題を解決できずに、メキシコを経由したアメリカ合衆国を消費地とした非合法な麻薬事業が活発な国家群です。

貧困問題と世界的な麻薬組織問題は、どうやら密接に関係していると見てよいのではないでしょうか。東南アジアもその一角です。
欧米のやり方は、力づくで武力を持って麻薬組織を撲滅しようと言う手法です。しかし麻薬組織側も半端ではない武力を持ってそれに対抗しようとしております。
経済の構造を変えて、ようするに麻薬よりも安全で儲かる環境が出来れば、麻薬生産者は長い時間の中で消滅していくでしょう。

経済は生き物のように見えますが、あるルールに従って客観的に推移します。ただ、ある環境で成功していく経済社会は、その経済社会が作り出した環境の変化でルールが変わって行くことを認識しなければいけません。
だから政治的コントロールが絶対必要なのだと思います。それを放置すれば、貧富差が広がり、その社会は衰退していきます。

4月の選挙で勝利したケイコ・フジモリ氏。その時行われた国会議員選挙で、議会はフジモリ派の方が多数を占めております。
ですから敗北宣言をしたケイコ氏は、「責任ある野党として、次期政権の政治運営を監視していく」と強調したわけです。

目的は貧富差の是正であり、それによる国力の強化です。
だからこそ、ケイコ・フジモリ氏の戦いはこれからも続くわけですね・・・

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