領海という範囲は、現在は国際法「国連海洋法条約」で決められたものです。これは1973年に始まった第三次国連海洋法会議で、さまざまな定義が議論され、その結果として1982年に12海里(22.2キロメートル)と200海里(370キロメートル)を主張する国が激増し、妥協案として基線から12海里までの領海と200海里までの排他的経済水域を認めるという妥協が成立したものです。
この海洋法条約には1996年6月7日に「中共」も加盟しておりますから、ともかく中共、韓国は領海12海里と排他的経済水域200海里を認めたわけです。
もちろん我が国も同年6月20日に加盟していますし、アルゼンチンとオーストラリアも1995年に加盟しております。
ともかくこうして海洋法はほとんどの国家が加盟し、この国際法は慣習法の発展形として成立しています。
この条約の排他的経済水域という妥協案は、沿岸国は「他国船舶の無害通航を受忍しなければならない」と言うものであって、無害通航とは「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」航行と定義されました。
しかし、外国船舶の航行が沿岸国にとって無害かどうかを判断する基準は明確ではなく、さまざまな事件が現在も起きているのが実情です。
今年3月14日、南米アルゼンチン沖の南大西洋の排他的経済水域内で、アルゼンチン沿岸警備隊が操業中の中共の大型漁船を発見し、停船命令を出しました。ところが漁船はそれを無視して船体を巡視船に衝突させようと向かってきて、そのまま公海への逃亡を図ったということです。
沿岸警備隊は警告の上で発砲し、その中共の漁船は沈没してしまいました。漁船の乗組員は船から脱出、そこを沿岸警備隊に拘束されました。
拘束されたのは船長を含め4人ということで、残る28人は付近の中共の漁船に収容されたということですから、この海域でうじゃうじゃ中共の漁船が操業していることが想像できます。
中共の外務省は、16日になって事態に「強い懸念」を表明し、アルゼンチン政府に乗組員の安全確保や類似の事案再発防止を要求しました。
「再発防止」は、中共が漁船の他国海域操業を取り締まれば良いはずで、違反した漁船は拿捕されても仕方がないことを漁民に通告すべきです。
中共側は外交ルートを通じて、アルゼンチン政府との交渉を開始したそうですが、世界的に行われているような中共の排他的経済水域内の違法操業に対して、アルゼンチン政府はその取り締まりを強化するように中共側に要請して欲しいものですね。
中共の漁船は昨年12月にも、韓国が北朝鮮との海上境界線と主張する北方限界線の南側に入り込み違法操業が行われていたそうで、韓国軍の艦艇が警告放送と警告射撃をしています。
日本の領海での赤サンゴの略奪がなされたことも記憶に新しいところです。なぜ中共はこのような国際法違反の犯罪行為を繰り返すのでしょうか。
習近平氏が国家主席になった2012年頃から、中華帝国を目指して攻撃的になり、国際条約を破り始めた中共なのだそうです。(中国4.0・暴発する中華帝国:ルトワック著・奥山真司訳より)
習近平主席が中華の復活を述べて攻撃的な外交をしたところ、国民は愛国心を燃やしました。そこでこの攻撃的な外交を止めることが出来なくなったそうです。
しかし、軍事的な面より経済的な側面を強調した外交にシフトしたところ、今度は欧州が乗ってきました。現在は国民と欧州の板挟みになった習政権のようです。
大きくなった中共経済を支えるには自国資源だけでは不足で、さらにまだ付加価値産業での雇用は少なく重化学工業を維持することが必要な中共なのです。
そのため売り先確保と資源確保の両面で中共の拡大は避けられません。
しかし拡大するにしても、日米欧との摩擦を起こすと経済制裁などになってしまうので、この諸国とは摩擦を起こさない地域へ進出するしかなく、それは中東とかアフリカの地域になるわけです。
こうして徐々に米国の領域と中共の領域を分けていく戦略なのだそうです。
今後、太平洋での行動は日米との摩擦を生むために避けて、インド洋を中心に行動するようになるのではないかとのことです。
中央アジアは鉄道網の整備で押さえ、ロシアは経済援助等で黙らせるという戦略です。
この戦略でタイ、カンボジア、シンガポール、マレーシアなどを味方に付けてインド洋に出る航路を確保するするわけです。
また、AIIBなどドルに対抗する基軸通貨戦略は、まずアメリカが手を引き始めたサウジアラビアを人民元圏に取り込むことから始めるでしょう。
石油主要国のリンクをドルから人民元にすることで、ドル基軸通貨制度は世界的に崩壊することになるからです。
サウジはスンニ派の拠点です。こうして人民元がスンニ派諸国の守り神になるわけです。シーア派の守り神はロシアとなるでしょうから、ロシアに経済援助して黙らせ、欧州は中東で中立を保たせます。アメリカはイラク戦争からの一連の失敗で出てこれなくなり、この地域はロシアがシーア派につき、中共がスンニ派について、利害調整をすることになるわけです。
この具体的な中共の世界戦略に対して、日米とフィリピン、ベトナム、インド、オーストラリアなどが反発することは織り込み済みで、しかしそれ以外の国は中共になびく事になるというわけです。
アメリカはヒラリー・クリントン大統領になっても引きこもりがちになる可能性が高く、太平洋や大西洋に中共が出てくると警戒されますが、インド洋であればアメリカにとって安全保障上あまり影響がないので、中共の行動を規制しようとはしないだろうという習政権の読みがあると言うのです。
安倍政権は、アメリカの反対を押し切ってでもロシア・プーチン大統領との会談を今年9月以降に実現したい考えです。もちろんこの中共の戦略に楔を打ち込むための外交です。
北方領土の問題を両国民の納得する方法で棚上げにして、ロシア経済の立て直しを日露友好のもとで行うこと、うまく行くことを願ってやみません。
ここが対中戦略(=中共の国際法無視を取り締まることを可能にする)のキーポイントになるからです。
0 件のコメント:
コメントを投稿