言論テレビという桜井よしこ氏のインターネット番組で、大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸 (くまがい みつまる)氏が面白いことを述べておりました。
「資本主義にはバージョン1からバージョン4まであり、現在の日本はバージョン3に位置している」というものです。
そして、現在はバージョン3からバージョン4への移行期に当たり、それが経済にさまざまな影を落していると言うようなお話でした。
番組そのものは、マイナス金利の効果とか、アベノミクスのこれからの課題、中共の経済のこれからについての番組だったのですが、この資本主義バージョン4という発言が面白くて、いろいろ考えてしまいました。
熊谷氏の説明では、バージョン2がフォード自動車などでやっていた規格(標準化)と大量生産の社会で、このバージョン2は日本が最も得意とする方式だったと述べておられました。
しかし、インターネットの時代になって、正社員と非正規社員の区別が起きて、それがバージョン3という方式に変わってきたというわけです。
そしてバージョン4は、「個人一人ひとりが、クリエイティブを発揮していく未来がある。」と述べております。これから20年~30年ほどで変わっていくだろうとのこと。
背景には人工知能などの発達があり、哲学・歴史・宗教など人文科学を学んだ広い視野が必要になってくると言うことでした。
おそらくバージョン1は、繊維産業などの生活必需品の量産であり、それはあっという間に莫大な利益と、そして市場のサチュレーション(飽和状態になること)を起こし、それが他国への市場進出を生み、やがて戦争に発展して行ったバージョンだったと思われます。
第二次世界対戦のあと、資本主義のバージョンは2になりました。「良いものを安く多くの人に」というスローガンで、自動車や家電そして情報機器というような、ライフスタイルを変えてしまう商品が量産され、我々の日常生活が変えられていきます。
冷戦構造という戦いの中で、資本主義が社会主義を生産性において凌駕しますが、この冷戦の中で日本は経済的な勢いをつけていきました。
社会主義のソ連邦が崩壊すると、核戦略に使われていたコンピューターネットワークが一般に無料で公開されます。このインターネットの出現で、資本主義はバージョン3に変わっていくわけです。
バージョン2で力を発揮した日本型の企業システムは、アメリカ型の企業システムに変わらざるを得なくなっていくわけです。
それは、インターネットによって投資の一般化が起こり、企業は短期の利益を求めて合理化を行うようになり、人件費の観点から正社員と非正規社員の区別が起きてきたからです。
これがバージョン3であり。正社員は企業にとって都合のいい「何でも屋」になってしまい、専門性を失って、それを埋めるのが非正規社員の専門性になってしまったからです。
このシステムは企業の生産性を落していることが最近はっきりしてきたようです。「同一労働・同一賃金」という言葉がそれを現わしています。
つまり、専門性を失った正社員と、それを埋める非正規社員の組み合わせよりも、正社員にもある程度専門性を持たせるやり方にしたほうが良いというわけです。
これを「ジョブ型」と言うのだそうですが、ここから「同一労働・同一賃金」という見方が生まれてきたようですね。
こうして資本主義バージョン3が改良されながら、それにつれて我々のライフスタイルは変えられていくでしょう。
そしてバージョン3が成熟していくにつれて、資本主義はバージョン4に変わっていくというのが、熊谷氏の述べるところです。
例えば、レゴの積み木の各ピースはレゴという企業が提供しますが、それによって何を作るかは子供たちの想像力です。
最近では大人もレゴを使って造形デザインなどを行っておりますが、資本主義バージョン4では企業とユーザーの間がこのような関係になっていく気がします。
難解で複雑な電子回路は、企業によって設計され、そして高密度LSIとして提供されますが、それをつなぎ合わせるのはユーザーの役割となり、そのユーザーが提供するものをさらに別のユーザーが利用してデザインを進めていくというような、意図しないで連鎖する生産プロセスが可能になっていくのではないでしょうか。
富士重工業が車の基本構造となる車台を刷新し、次世代車台「スバルグローバルプラットフォーム」なるものを開発しました。これなどは標準化がうまくいけば、将来は台車だけで販売する計画かもしれませんね。自動車のデザインは専門のデザイナーに任せて、ユーザーはデザイナーに注文するという形式です。
家電も、IT機器も、次第にこのような販売方式となって、個人のクリエイティビティが経済的に発揮されるようになるわけです。
この時、同一労働・同一賃金という言葉は死語になるということでした。
資本主義・バージョン4がどのようにして我々の生活、ライフスタイルを変えていくか、そしてそれがどのようにして新たな国力の源泉となっていくか、まだよくわかりませんが・・・暗い未来より明るく希望のある未来をイメージするようにしませんか・・・・
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