2020年8月3日月曜日

李登輝元総統の逝去

台湾の民主化をに切っ掛けを作り、自らは23歳までは日本人だったことを誇り、そして「日本精神」として敗戦前の日本のすばらしさ、特に「公に尽す」という日本精神の大切さを訴え続けていた李登輝元総統が亡くなられました。7月30日のことでした。

我欲に徹した華人と、それを暴力で取り締まる社会体制の中共とはまったく背反する考え方、それが日本精神です。
日本国民は半ば当たり前のこととして成長しますし、華人も同じだろうと思って接しますからコロッと騙されますが、台湾の方々はこの日本精神に一種のあこがれを感じていたようです。

華人であった蒋介石総統が、日本敗戦後の台湾にやってきて台湾人に行った暴力。その象徴が2.28事件であることはご承知の通りです。
それでもアメリカが蒋介石政権を承認し、台湾を自由主義世界の国家として認めていたことから、台湾人は我慢していたようです。

しかし、アメリカ・ニクソン政権が対ソ戦略の一環として中共を認めた1972年から、台湾は苦境に立たされます。中共はアメリカに対し、沖縄と台湾は自国の領土だと言い張っていました。
アメリカはそこを曖昧にしながら、レーガン政権を経て、ジョージ・H・W・ブッシュ政権の時代の1992年、遂にソビエト連邦を崩壊させます。

このようなアメリカの動きを逆手に取って、中共は自由化路線を打ち出すとしてアメリカや自由主義世界を騙し、そしてアメリカや日本の高度技術を盗む行動に出ました。
こうして騙される自由世界と中共の経済成長が続き、アメリカがそれに気づくまで20年以上かかりました。

アメリカの中共承認というショックかどうか、蒋介石総統は1978年に亡くなります。その後台湾総統を継いだのは息子の蒋経国氏でした。
台湾に対する締め付けと甘い罠。このような環境で苦しんだのでしょうか、蒋経国総統は1988年に亡くなり、その後継者として登場したのが李登輝総統でした。

多くの中共からの政治工作がなされたようですが、李登輝総統はそこを上手く乗り切りました。
「民主主義と自由とは、国家の繁栄と進歩をもたらす基盤」という信念を持って、強靭な政治が行えたと言うことです。
そして民主進歩党が誕生し、李登輝氏の後の総統として陳水扁氏が誕生します。そう、李登輝氏は独裁国家だった台湾を民主国家に変え、複数政党制を実現したのです。

しかしこの陳水扁総統は台湾土地開発公司の不正取引に関する汚職などが取りざたされ、スキャンダルに発展してしまいます。
そこを突いた中共の傀儡「馬英九」氏によって、総統の座を中共寄りの国民党に奪われてしまいます。

中共は馬総統を使って盛んに日台の引き離し戦略を取るのですが、元気だった李登輝元総統の日本に対する親日姿勢が台湾国民に支持され、馬総統の8年間では日台離反は出来ませんでした。
中共は台湾の財界を中共に引き入れ、利益誘導で台湾の取り込みを図ります。

そして再び反中の民進党・蔡英文氏が政権を奪取します。2016年のことでした。
台湾の妨害工作は陰険な手法を使い、また軍事力での嫌がらせもしつこく行われます。特に習政権は自国の軍事力を過大評価しているように見えます。北朝鮮と似ておりますね。

しかし李登輝元総統に秘蔵っ子であった蔡英文氏もまた。強靭な政治を行い中共の陰湿な嫌がらせや脅しには屈しませんでした。

2017年にアメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が就任すると、対中関係の見直しが始まります。トランプ大統領自身は習主席と会ったり、友好外交を演出していましたが、共和党の動きは「このまま中共を放置は出来ない」として、台湾への軍事支援を開始します。

蔡英文政権にとってはこれが追い風になります。アメリカは2018年以降、対中貿易に高関税を掛け、そして2019年には「高度技術の窃盗を国家ぐるみで行った」として中共からの留学生、研究員、そして企業などに様々な制限をかけ始めます。

台湾に対するテコ入れも、台湾関係法をさらに拡充し始め、対中共包囲網を構築していきます。習政権は表向きには強硬姿勢を貫いていますが、実質台湾には手が出せなくなっていくでしょう。
そしてその代わりに脆弱な尖閣諸島を襲う準備を始めました。

台湾を取り巻く国際情勢は、武漢コロナウイルス問題を挟んで急激に世界から注目され、同時に対中共不信感が覆います。

このような世界を見て、李登輝元総統は安心したのかも知れません。2020年7月30日にご逝去されました。

李登輝元総統はキリスト教長老派のクリスチャンでした。しかし「日本精神」を誇りにしていましたし、日本の神道にも通じていたと聞きます。
彼の言う「日本精神」とは「公共のために行う自己犠牲の精神」と言うことだとのこと。日本ではすでに忘れられた精神とも思われます。

我々が出来る最大の李登輝氏への弔問は、日本国民の中に「日本精神」を取り戻し、本来の日本、李登輝氏が愛してやまなかった本来の日本に立ち返ることではないでしょうか。
ご冥福をお祈りいたします。

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