2018年1月11日木曜日

2つの話し合い・解決には程遠く

昨年の12月16日、北京で「第13回東京-北京フォーラム」の安全保障分科会が開かれました。
出席したのは日中の有識者と言うことで、中共側から張沱生・国際戦略研究基金会学術委員とか欧陽維・国防大学教授、朱鋒・南京大学国際関係研究院長などで、日本側は小野田治元空将、香田洋二元海将、中谷元・元防衛相などです。

このフォーラムで話し合われたのは、東シナ海問題と南シナ海問題、そして北朝鮮問題でした。

そして今年に入って、韓国・平昌五輪への北朝鮮参加を巡って南北軍事境界線上の板門店の韓国側施設「平和の家」で、2年1カ月ぶりとなる南北当局間会談が開かれました。
日米も注視していたこの会談では、韓国側から趙明均・統一相、そして北朝鮮側から李善権・祖国平和統一委員長(ともにベテランだそうです)が話し合いを行いました。

ここでは、平昌五輪への北朝鮮選手団の受け入れをどうするかが話し合われましたが、同時に緊張緩和に向けた何らかの話がなされるかどうかが注目されていました。

その他にも、日韓合意に関して韓国が見直すという話が出ていました。しかしこれは我が国が拒否し、国際条約の意味を訴え、韓国側が合意を守るように強く出たところ、韓国側は勝手に「誤ったもつれは解かなければならない」とか「日本が拠出した10億円の扱いを日本と協議する」とか「日本と心が通じる真の友人になることを望む」などと話しながらも、日本との交渉はしない方針にしたようです。

この言い方、「日本が心から謝罪するなどして、被害者たちが許すことができた時が本当の解決だ。」とか「日本とは心を通わせた真の友人となることを望む。歴史問題と未来志向の協力を分離して努力していく。」などと情緒的な言い回しで世界を騙そうとすることこそが、日韓がうまく行かない最大の理由です。
もともとは朝日新聞のフェイクから始まったのですからね。その認識がないと友好は無理なのです。

我が日本としては・・・ほっとくしかない状況ですね。何か言ってきたら「まず国際合意を守れ」と突っぱねましょう。

さて、中共とのフォーラムではかなり対立点が明確になって来たようです。
張沱生氏が「日中間の海洋摩擦はある程度緩和され、東シナ海をめぐる情勢は比較的平穏だった」と述べたことに対し、小野田治元空将は「張先生は、最近東シナ海は静かだとおっしゃったが、それは事実誤認だ。まったく静かではない」と述べて、さらに「少なくともわれわれ自衛隊の正面にいた人間からすると、中共側の皆さんの言っていることと、人民解放軍が実際に行っていることは随分と開きがある」と中共側の“言行不一致”への不信感を率直に伝えたと言うことです。

中共が軍事拠点化を進めている南シナ海問題では、香田洋二元海将が「海洋の自由利用という点については日中の見方がまったく違う。中共は九段線(の内側)は歴史的に自分たちの海だと主張し、自国の管轄権と国内法が及ぶと主張している。これでは海洋の自由な利用に反し、世界中の海がパニックになる。海洋秩序の大破壊だ」と厳しく非難したそうです。

すると欧陽維氏が「そもそも南シナ海で日本の船舶の航行に影響が出ているのか? 日本漁船の漁に影響しているのか? 日本の安全に影響しているのか?」と香田氏に迫ります。
金永明・上海社会科学院日本研究センター執行主任も、「日本の船舶は南シナ海における航行の自由は損なわれていない。中共は南シナ海のあらゆる海域が中共のものだといっているわけではない」と反発しました。しかし「九段線」については具体的に触れなかったそうです。
あらかじめ用意されていた答えのように見えます。

香田氏は「確かに公海で日本が航行を邪魔されているわけではない。だが世界で国内法を認めている海はない。中共海軍が、これから世界の海に出ていったときに、他国から国内法を主張されて困るのはあなたたちだ」と反論したとか。

また、徳地秀士・元防衛審議官が、「冷戦は四半世紀前に終わったが、一方において日本のような民主国家、他方でロシア、北朝鮮、中共などの権威主義的な体制があり、この対立は引き続き続いている」と民主主義と独裁主義(ここでは権威主義と述べております)について切り出します。

「日本は民主主義体制を非常に大切にしている。私は『民主的平和論』には必ずしも賛成はしないが、民主的な体制というのは、例えば法の支配や人権、透明性、説明責任など、国際社会の秩序を考える上でも非常に重要な要素との適合性がある」と述べます。

これに対し朱成虎・退役少将は、「頑強な冷戦思考だ。冷戦後の6度の大きな戦争はいずれも『民主国家(アメリカ民主主義)』が起こしたものだ」と述べ、また欧陽氏は「世界が同じ旗印を掲げる必要はない」などと述べ、そして司会者の陳小工・元空軍副司令は「非常に耳障りだ」と不快感を露わにしたとか。

さらに「中共が集権国家だと公言するのは不当で無知な振る舞いだ。釣魚島(尖閣諸島の中共側名称)は民主国家と集権国家との間の争いとでもいうのか」などと、怒りが止まらないと言うような状況になったとのこと。(「法の支配」には言及しません。ウイグルやチベット問題は将来の戦争を予感させているのに)

産経には、この「キーワード」・・即ち「民主国家と集権国家」という言い方に中共は敏感に反応することが判った・・と出ておりました。

韓国と北朝鮮の協議の方は、韓国側が「非核化に向けた対話再開が必要だ」との立場を表明すれば、北朝鮮側は「われわれが保有する核爆弾など最先端兵器は徹頭徹尾、米国を狙ったもので、同族に向けたものではない。あくまで米国に核保有国だと認めさせる問題だ」と述べたそうです。
結局、平昌五輪に北朝鮮が参加することだけが決まっただけだったようですね。

いかがでしょうか。朝鮮と中共との話し合いの比較は。
このような隣国と付き合わなければならない我が国ですが、現状の憲法では話し合いすらこの程度で終わってしまうのですよ。

もっと強い警告が、国際法を遵守させるためには必要なのではないかと思うのですけど・・・

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