ドゥテルテ大統領の身内がアメリカに殺されたそうで、だから大統領はアメリカが嫌いなのだそうです。そしてそういうフィリッピン国民は大勢いることも間違い無いと思います。ドゥテルテ大統領の国民の支持は、このような背景もあるからでしょう。
フィリピンはスペインに植民地とされ、フィリピン人は過酷な労働を強いられました。そして1898年にパリ条約でアメリカに統治権が移されます。
アメリカがフィリピンを植民地としたわけですが、1899年にフィリピン共和国がフィリピン人の手で建国されます。
もちろんアメリカはこの建国を認めませんでした。そんなわけで、1902年までフィリピンはアメリカと独立戦争を戦います。
アメリカ合衆国議会は1916年ジョーンズ法でフィリピンの自治を認めますが、完全な独立にはほど遠く、アメリカはフィリピンに膨大な利権を確保し続けたのです。
そんなフィリピンに1941年12月、アメリカ合衆国軍と開戦した大日本帝国が攻め込み、マニラ市に上陸してアメリカ軍を駆逐、アメリカ合衆国陸軍司令官のダグラス・マッカーサーはオーストラリアに逃亡してしまいます。その時の捨て台詞が「アイシャルリターン」だったと言いますが、どうもあとから作られたセリフのようですね。
1944年、大日本帝国は劣勢となり、ダグラスマッカーサーはフィリピンに戻ってきます。再びアメリカの植民地になるのかと思いきや、1946年のマニラ条約で、フィリピン第三共和国が再独立したのです。
共和国という不安定な国家は、冷戦時代の幕開けに国民が引き裂かれ、共産主義勢力と旧地主達との間で内戦状態になって行きます。共産ゲリラの背後にはソビエトが居たことは間違いありません。
この内戦を平定したのがアメリカの支援を受けたラモン・マグサイサイ第7代大統領でした。
このマグサイサイ大統領は、1957年に航空機事故で亡くなります。そして1965年に反共産主義を唱えるフェルディナンド・マルコス大統領が誕生するわけです。
マルコス大統領はアメリカの経済支援を背景に独裁政権となり、フィリピンの政治の腐敗が進みます。
ともかくアメリカはフィリピンにろくなことをしませんでした。どこでドゥテルテ氏の身内がアメリカによって殺されたのかは知りませんが、このような時代の中でアメリカが嫌いになっていったことは間違いないでしょう。
ドゥテルテ大統領は中共で習近平主席の接待を受け、南シナ海の問題を棚上げにして、ミンダナオ島のバナナの禁輸を解くなど、また経済援助を受けるなどのフィリピンの国益となるように見える約束を取り付けたようです。
これまでのオバマ大統領に対する暴言や国際刑事裁からの警告などを無視して、「フィリピンは親米から親中になった」というメッセージを北京から発信してしまったように見えます。
上記のような経緯でフィリピン国民はアメリカが嫌いなのでしょう。しかし、だからと言って中共が好きだと言うことにはならないはずです。フィリピン経済が華僑に牛耳られていることなどを見ても、口には出さなくても、敵の敵は味方という単純なことにはならないと思います。
ドゥテルテ大統領は、習主席との公式の場でガムを噛むような仕草を見せたり、調印式の最中に目を閉じて「居眠りし始めたような」振る舞いをして、それをフィリピンのメディアがツイッターに書きたてています。
このドゥテルテ大統領の行為が、フィリピン国民に対するメッセージなのかどうか、それは判りませんけど。
シンガポールの南洋工科大学で助教を務める古賀慶氏は、「(ドゥテルテ大統領が)仲裁裁定の遵守を首脳会談で求めなかったのは、一時的な『棚上げ』に応じただけで『和解』ではない」と述べております。
「仲裁裁定を前提とするドゥテルテ大統領の姿勢は一貫しています。中共の態度を変えられない以上、認識の違いは見て見ぬふりをして中共の顔を立てたほうが、建設的であると判断したのでしょう。」と言うことですね。
また、古賀氏は「アメリカのコミットメントを試す意味合いもある」と言います。つまりアメリカは仲裁判定を支持していますし、「航行の自由作戦」などを打ち出していますが中共は大して気にしていません。武力攻撃を含む抗議活動が行われるのかどうか、それを試しているのかも知れませんね。
そのドゥテルテ大統領が25日に日本を歴訪します。安倍首相にとって、東アジアに対する日本のスタンスを明確に示す正念場となります。
しかし日本が南シナ海で対中軍事行動を起こすとは言えません。あの憲法があるからですね。
しかし少なくとも中共経済の実態について説明することは可能でしょうし、日比経済交流を今以上に活発化し、農産物の加工技術や軽自動車の技術移転などに言及することは出来るのではないでしょうか。
また、海上警備行動のための艦船を貸与することなども可能でしょう。日米同盟は必ずフィリピンを助けることを、暗に述べることが重要ですね。
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