台湾(中華民国)の第14代総統に就任した民進党の蔡英文氏の就任演説は、全く嘘がありませんね。現実主義の蔡氏の気持ちが溢れております。そしてそれに立ち向かう「信念の総統」であることが伝わってきます。
この演説の中に、我が国にも該当する部分を引き抜いてみました。
「年金制度は改革せねば破産する。教育制度は社会の動きと乖離(かいり)している。エネルギーと資源は限りがあり、経済は勢いに欠け、旧来の受託生産方式はボトルネックに直面している。新たな経済成長モデルが必要だ。人口構造は急速に高齢化しているが、高齢者介護制度は完備されていない。出生率は下がり続けるが、託児制度はめども立たない。環境汚染は深刻だ。国家財政は楽観できない。司法は人々の信頼を失っている。食品安全問題は家庭を悩ませている。貧富の格差は深刻化し、社会のセーフティーネットは穴が多い。最も重要なのは、若者の低賃金だ。彼らの人生は未来への無力感で満ちている」
いかがでしょうか、我が国にもピッタシで、あるいは他の国にも当てはまることかも知れませんね。
さらに、「若者の境遇を改善することは、国家の境遇を改善することだ。若者に未来がなければ、その国の未来もない。若者が苦境を突破することを助け、世代間の正義を実現し、より良い国を次の世代に引き継ぐことが、新政権の責任だ」として、政府責任を認め新政権の目指す方向を示唆しています。
それに引き換え、日本の民進党は「安保法制反対」だとか、「憲法改正の安倍内閣打倒」など、お題目ばかり唱えて、その実質は選挙のことしか頭にないようです。
日本の民進党の蓮舫代表代行が、ネットのツイッターで「安倍内閣の外交は高く高く評価します」との書き込みを行ったようですが、それならば日本の民進党は今後どうしていくべきか、自身の考えも書き込むことが出来るのではないでしょうか。
台湾・民進党の蔡総統は、経済政策において「イノベーション、就業、分配を核心的な価値とし、持続的な発展を追求する新たな経済モデルを打ち立てる。」として、「経済の活力と自主性を強化し、世界および地域との連携を強め、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)・東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を含む多国間および二国間の経済協力・自由貿易交渉に積極的に参加する」そうです。
そして「過去の単一市場に過度に依頼していた現象に別れを告げることだ」として、対中依存度を大きく引き下げる政策に出るような意思を表明しております。
また、「環境への責任も忘れてはならない。経済発展の新たなモデルは国土計画、地域の発展と環境の永続性と相互に結びついている。汚染管理を厳しく査定し、台湾を循環型経済に向かわせ、廃棄物を再生資源に転換する」として環境対策にも力を入れるようですが、これなども中共に対する「台湾は台湾」という意思表示であり、未だ環境汚染から抜けられない中共への軽蔑とも取れますね。
戦後にやってきた外省人や、先住民族であろう少数民族問題などにも言及しながら、司法改革も積極的に進めるそうです。
10月に『司法国是会議』を開くそうで、「司法は法律家だけの司法であってはならず、全国民の司法であるべきだ。司法関係者だけでなく、全国民が参加する改革」を行うそうですが、さてどのような司法改革になるのでしょうか。蔡氏はアメリカのコーネル大学ロースクールで法学修士を取得した法律の専門家ですから、この司法改革は、サヨクの悪臭がプンプンする日本の司法にも効果があるかも知れませんね。
さらに両岸関係(台中関係)についても、「東南アジア諸国連合(ASEAN)とインドとの多元的な関係を増進し、対岸(中国)とも地域の発展に共同で参与する関連の議題について、率直に意見交換し、各種の連携と協力の可能性を探る」として、「民主的メカニズムの強化と合意形成で、対外的に一致した立場を形作る」としておりますから、実際には民主的メカニズムを持っていない中共をスポイルする気かも知れません。南シナ海問題などを意識してのことですね。
また、台中の二国間関係については「私は中華民国憲法に基基づき総統に当選し、中華民国の主権と領土を守る責任がある。」として、「両岸の両会(双方の窓口機関)が相互理解と求同存異(共通点を求めて相違点を残す)という政治的な考え方を守って協議を行い、若干の共同の認知と了解を得た1992年の合意」を尊重するそうです。
その上で、「中華民国憲法、両岸人民関係条例およびその他関連の法律に基づき、両岸の事務を処理する。両岸の2つの政権党は過去の重荷を下ろし、良性の対話を進め、両岸の人々に幸福をもたらすべきだ」として、中国は一つであっても、大陸の共産党と台湾の民進党は別であり、対話しながら両岸の人々に幸福をもたらすようにすることを表明しております。
ようするに共産党が人民を幸せに出来なかったら、民進党が大陸も幸福にするという意味でしょうね。
このように、非常に穏やかながら、かなり共産党には厳しい就任演説です。また、やることも早く、馬英九前政権が改定した「中国色」が強い学習指導要領を廃止する考えを表明しております。
前政権が最後に行った反日政策、即ち「沖ノ鳥島は岩礁である」として日本の領有権を認めず、軍艦を当海域に派遣した問題では、政権発足直後の22日に軍艦を引き上げさせ、詳細については海洋法条約に基づいて協議を続けると述べ、問題の幕引きを行いました。
滑り出し順調の蔡英文政権です。今後に期待が持てそうですね。
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