2015年11月27日金曜日

トルコ、ロシア戦闘機を撃墜

トルコの領空を侵犯したロシアの戦闘機スホイ24に対し、トルコ軍は「撃墜までの5分間に10回にわたり警告した」が、ロシア機は立ち去ろうとしなかったためにF16戦闘機2機のスクランブルで撃墜されました。
領空侵犯が事実なら当然のことでしょう。主権国なんですからね。

しかしロシア軍側は、領空侵犯を否定し、プーチン露大統領は24日、「トルコとの関係に深刻な結果をもたらすだろう」と怒りをあらわにします。
パラシュートで2人のパイロットは脱出しましたが、シリア反体制派などにより2人とも死亡した可能性が高いそうです。

スホイ24とF16の戦いですから、20世紀型の戦闘だったわけですが、スホイ24は2機のF16に対応できなかったようです。
10月も、ミグ29がトルコのF16に撃墜されていますが、プーチン首相はそれを認めませんでした。最新鋭の戦闘機がアメリカ製戦闘機に撃墜されたなんて言えませんから。
今回はパイロットの救出に向かった露軍のヘリもシリアの反体制派が発射した米国製ミサイルで撃墜されてしまいましたから隠しようもなかったのでしょう。
中共に売る予定の最新鋭戦闘機スホイ35は大丈夫でしょうか? いや、商談がですよ。
フランスは素早く米仏関係を優先するとしたようです。
それでもプーチン大統領は、この事件を口実にシリアに防空兵器S400の配備を決めたと言いますから、まあプーチン氏も抜け目はありません。

シリアのアサド政権はシーア派で、イスラム国はスンニ派です。対するトルコのエルドアン大統領はスンニ派を支援しているわけではないようですが、シリア反体制派のトルクメン人はトルコの同胞となっていて、彼らに対する防御の意味もあったのではないかとの憶測が出ているようです。

かつてはシーア派を敵視していたアメリカが、スンニ派のイスラム国を敵視するようになって、石油利権がらみでアサド政権を敵視していたアメリカも、やっとシリアに入り込んだイスラム国を敵視するようになり、そこにパリ同時多発テロが加わり、ロシア旅客機が爆破されて怒ったプーチンがアメリカにイスラム国への報復を宣言してシリア内部のイスラム国攻撃を開始、やっと米露がまとまり始めた矢先でした。

トルコでも自爆テロがあって多くの犠牲者が出ていますから、イスラム国には厳しく対処するはずです。今回のロシア軍機撃墜は、もしかしたらトルコ内部の政治的問題も絡んでいるのかも知れませんね。

歴史的に見ると、ロシアの南下策で結構トルコ(オスマン帝国)とは戦争をしておりますから、まああまり肌合いは良くなさそうです。

さて、今回の事件では北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長がトルコ側を支持しました。冷戦時代の不快感がまだロシアに対してあるのでしょうか?
エルドアン大統領の、「警告のうえ、交戦規定に沿って撃墜した」と述べたことを支持したようです。

安倍政権の戦略は、アメリカとロシアを協同させ、敵は中共であることをはっきりさせることでした。ですがトルコのことを少し誤解していたのかも知れません。
日本とトルコが仲が良いのは、エルトゥールル号遭難事件だけではありません。東洋が西洋に初めて勝った日露戦争もその一つです。
しかし、現在の日本にはその両方ともないのです。エルトゥールル号遭難の時は、まだ日本文化の常識がありました。ですから助けることが出来たのです。日露戦争で果敢に戦った軍隊も今は無く、その戦いに一致団結した日本国民のあり様も・・今はないのです。

一方のトルコも、それはトルコ共和国であってオスマン・トルコではありません。国民に潜在する性質は同じかもしれませんが、国際政治の場では思わぬ齟齬が致命傷となるやも知れません。

切っ掛けはイスラム国と、シリアに住むトルクメン人の問題であることも、安倍政権にはどうにもならない問題のようです。
情報の欠落が祟ったのかも知れませんが、情報があってもどうにもならないでしょう。こちらの戦いはイスラム圏の内紛であり、そこにキリスト教国が従来のやり方で利用しようとしている問題ですから。
もっと広義に考えれば、ヘブライ系の内紛なんですよ。

考えてみれば、日本と中共(いや、この場合は中国かな?)の宿痾(痼疾)についても、西欧や中東諸国には判らないでしょう。
中華思想という選民・差別思想が如何なるものかも伝わっていないでしょうし、日本が中華思想には組みしていないこと、朝鮮は長い間それにとらわれ、唯一の救いが「自分より野蛮な日本(中華思想的に見て)」があるという思い込みだったこと・・・などはなかなか理解できますまい。

そこで安倍首相は、「世界秩序の法による支配」と、まあうまい言葉を考えましたね。ここで「法」と言う意味は、第二次世界大戦でのアメリカが参戦した時の言い分です。「この戦争は領土の争いではない。正義の戦いである。したがって法に依って裁かれる」と言うわけです。
これがあるからドイツはニュルンベルグ裁判で、そして日本は東京裁判で裁かれ、法に依って統治されたわけですね。それがどんなにいい加減なものであっても、初めて戦争の終結に法が使われたわけです。

そして世界平和を法に依って成し遂げようとして、国際連合(つまり連合軍)が頑張って居るのが現在なのです。そこに国連(即ち国際法)を無視した中共の横暴があって、そこで「世界は法で統治されるべきだ」という安倍首相の戦略があったわけです。

トルコによるロシア戦闘機の撃墜・・・国際法を作り守る側が「法による支配」を揺るがすことの無いよう、しっかりとしてほしいですね。

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