2014年7月5日土曜日

中近東で起きているのは国家崩壊の戦乱

軍事評論家の鍛冶俊樹氏がメルマガで、「現在、中近東で起きている事象は、国家対国家の戦争と言うより国家崩壊の戦乱である」と述べられていました。

オイルシェールから原油を取り出し、それを燃料製品(ケロシンとかガソリンなど)にする技術が採算に合ったアメリカは、すでにほとんど掘りつくした中近東から手を引きました。
中近東各国は、さらにオイルを生産していますが、その採取量が減り原油価格は上昇、新たに開発される油田は採掘コストがかかりこれも原油価格上昇の原因になっております。
だからこそアメリカのオイルシェールが採算ベースに乗ったのでしょう。オイルメジャーの画策もあったと思います。

アメリカが中近東から手を引けば、イスラム圏はさまざまな部族の対立となり、それがイスラム教派閥として何らかの利権を巡って殺し合いが始まります。
スンニ派とかシーア派などと言っているようですが、あまりイスラム教とは関係ないようですね。

この中近東の暴力的崩壊に対して、イスラエルがさまざまな手を打っているとか。イスラエルの戦略研究家の話から、鍛冶俊樹氏の分析によると・・・

(1) イラクにおける戦乱
・北部クルド地域、中部スンニ派地域、南部シーア派地域の3分割は不可避
・イスラエルは既にクルド独立承認の姿勢を見せている。
・クルド人地域はイラク、トルコ、イランに跨っているからクルディスタン国家が成立すれば、必然的にイラク、トルコ、イランの解体となる。
・イラク中部スンニ派地域が独立すれば、アルカイダが主導権を握る。
・アルカイダはサウジ王家を標的にしているから、必然的にサウジアラビア崩壊に直結する。

(2) イスラエルの戦略 
・イスラエルはシリア解体を目論んでいる
・そしてイスラエルは新たにヨルダンの解体を目論んでいる。
・ヨルダンが解体されれば、パレスチナ人をヨルダンに強制移住させられる。
・イラク南部シーア派地域をイランに併合させ、イラン北部クルド地域独立の見返りにイランの核開発を承認し、イスラエルとイランの2大核武装国で中近東を分割する。

(3) イスラム武装勢力ISIL/ISIS
・イスラム武装勢力ISILは現在イラクに侵入している。
・シリア、イラク、ヨルダンに跨るイスラム国家の樹立を目指している。

・・・と言うことです。もちろんイスラエルの背後にはアメリカが居るわけです。

イスラム原理主義のアルカイダ、その英雄・オサマ・ビン・ラディン氏が行ったアメリカ本土・貿易センタービルを始めとする3・11同時多発テロ。
そしてハイテク兵器を使うアメリカの報復は、その高額な戦費調達にグリーンスパンFRP議長が使った住宅バブル・・・そしてその崩壊(リーマンショック)を招きました。

その後、長期デフレを避けるためにアメリカが取った方法は「ドルの大量供給」だったのです。円が高騰し日本も酷い目に合いますが、通貨供給量を増やしただけではダメなのです。一時的には途上国などが潤い経済は安定しているかに見えましたが、結局その通貨は銀行に舞い戻り、莫大な金利を付けなければならなくなってしまったのです。

まさにイスラムの知恵と、その実行者・ラディン氏の打った戦術で、アメリカは没落していきました。
そしてそのアメリカが使う「ドルの維持戦略」が原油価格の高騰とオイルシェールの実用化による中近東からの撤収です。
そして中東で今起きているのは、アメリカの撤収によって、これまでドル経済に支えられてきた中近東国家が崩壊し始めたということのようです。

アメリカの衰退によって同じことが日本・東アジアでも起きておりますが、これは今は取り上げません。
ドル経済によって栄えた中近東の国々。しかし安価な石油の枯渇によって、石油・ドルのリンクで世界通貨として君臨したドルが衰退しているとも言えるでしょう。

アメリカは「グローバル化」という言葉を使って、大量に発行したドルの金利を確保しようと必死です。安倍政権もアメリカに協力しています。今アメリカに協力しないと、日本の安全保障が危うくなるからです。そこを巧みにアメリカが利用しています。
しかし世界は現在、「反グローバル化」に向かいつつあります。つまりアメリカの顔色を伺いながら、ブロック経済に向かって舵を切っていると言うことです。

アメリカはオイルシェールによって自国のエネルギーを確保しました。しかしこのオイルシェールは「焼畑農法のようなものだ」という人もおります。
つまり、国土が荒れ不毛の地が広がるだけだと言うことです。

崩壊する中近東の国々は、やがて新しい国家を自分たちで作ることが可能でしょうか? そして超大国から普通の国になって行くアメリカは、土俵を変えて再び輝くことができるでしょうか?
ともかく今は、石油・ドルのリンクが終焉を迎え、そしてそのことが間違いなく「戦後レジームの終焉」を告げているのですね。

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