米金融大手JPモルガン・チェースが、米司法省など当局側に罰金などで計約130億ドル(約1兆2700億円)を支払う方向で調整しているそうです。
信用力の低い個人向けの住宅融資債権を基にした住宅ローン担保証券(MBS)という住宅ローン関連の金融商品販売を行ったのがJPモルガン・チェースでした。
その結果、2008年のリーマン・ショックを起こし、世界中の投資家に損害を与えることになりました。その世界の怒りはいまも収まってはいないのですね。
JPモルガン・チェースは、司法取引で当初30億~40億ドル程度を支払うと提示したようですが、アメリカ当局側はそれでは不十分として、もっと巨額の支払いを求めることで責任を厳しく問う考えを示しているようです。
でもJPモルガン・チェースの総資産は2.2兆ドルですから、130億ドルくらいなら大したことはないのでは?
JPモルガン・チェース銀行は、2000年にチェース・マンハッタンとJPモルガン・アンド・カンパニーの2社が合併してできた銀行のこと。実質はチェース・マンハッタン銀行がJPモルガンを買収した合併でした。
そしてその後、2004年には商業銀行バンク・ワンを買収、2008年には投資銀行 ベアー・スターンズを買収、そして同じ年に貯蓄貸付組合 ワシントン・ミューチュアルを買収しております。
アメリカ建国以降、この国の銀行は激しく合併を行っておりますので、複雑な関係が出来上がっております。
JPモルガン銀行の元は、1838年に英国・ロンドンに設立されたジョージ・ピーボティ&カンパニーのパートナーとして、ジューニアス・スペンサー・モルガン(J.S.モルガン)氏がアメリカで金融業を始めたところから始まります。
1864年になって、J.S.モルガン氏がこの事業を引き継ぎ、J.S.モルガン&カンパニーと社名変更しておりますが、その息子のジョン・ピアポント・モルガンが、1861年にJ.P.モルガン&カンパニーを設立し、父親のJ.S.モルガン&カンパニーが持っていたヨーロッパの証券のニューヨークにおける販売を引き受け、その拠点となっております。(ジョン・ピアポント・モルガンは、クリスマスソング「ジングルベル」の作詞をした人)
チェース・マンハッタン銀行は1799年に創立したバンク・オブ・マンハッタンが、1955年にチェース・ナショナル・バンクを買収して出来た銀行です。
バンク・オブ・アメリカが1958年にクレジットカード「バンカメリカード」を発明すると、それと競争するように「MasterCharge」を発明します。現在、バンカメリカードはVisaカードとなり、MasterChargeはMasterカードとなって、日本ではそれぞれ三井住友銀行と三菱東京UFJ銀行が日本の市場を受け持っています。
1907年、ロンドンでの米銀の手形割引拒否に端を発する恐慌が起き、アメリカ合衆国内の決済システムが混乱してしまいました。そこで1913年、ウッドロウ・ウィルソン大統領(民主党)はJ.P.モルガン氏とかジョン・ロックフェラー氏のバックアップを受けて、連邦準備制度(FRB)を成立させます。
この時のFRBは政府の強い影響を受け、金融政策の独立性がなく、それゆえに1929年のアメリカの金融バブル崩壊を世界大恐慌にまで発展させてしまったのです。(政府がお金を供給しなかったからです)
このことが指摘されたのは、第二次世界大戦後でした。そしてブレトンウッズ体制がスタートしたとき、FRBと財務省が協定を締結し、FRBが金融政策の独自性を持つようになったようです。
ですから戦後の日銀の独自性は、この時のアメリカの政策と考えて良いでしょう。何しろこの時代、日本には主権がありませんでしたからね。
ともかく、アメリカの発展とともに歩んできたJPモルガン・チェースです。その銀行に対して、リーマン・ショックの責任を厳しく問うアメリカ当局なのです。
その理由は、今アメリカは民主党政権だからではないでしょうか?
アメリカの発展とともに歩んできた銀行は、基本的に「自由・自己責任」であり、「力こそ正義」という風潮があります。そしてそれが自由競争を謳い上げ、共和党の政策に結びついているように思います。
この「力こそ正義」の銀行が、共和党と結びつくのは当然ですが、同時に経済危機が発生すれば民主党に有利に働くわけです。
FRBが出来たとき、政権は民主党でした。しかしこの時は問題の元凶が英国だったわけで、ゆえに銀行は民主党をバックアップしたのでしょう。結果として出来上がったFRBは、その後に発生した世界恐慌を抑制できませんでした。
ルーズベルト大統領は、ニューディール政策で通貨供給量を上げようとして公共投資を行いますが、これが議会で「共産党の政策だ」と批判され挫折します。ケインズ経済が否定され、日本を巻き込む第二次世界大戦によるバブル経済で、やっと正常に戻すわけです。
再び経済危機がアメリカを蝕んでいます。ですから共和党はまだ立ち直れません。オバマ大統領は、さらなる借金に反対する議会を、国民の批判によってどうにか乗り越えました。
更なる借金は再びドルを弱くします。経済危機を起こしたJPモルガン・チェースに、少しでも多くのお金を出させ、借金を軽くしようとしているように見えます。
ウォール街と、オバマ・民主党政権の戦いは今まさに佳境に入ったところでしょうね。
0 件のコメント:
コメントを投稿