経済評論家のリチャード・クー氏が講演会で面白いことを述べていました。
彼は日本の土地バブル崩壊の直後から「バランスシート不況」という言葉を使って、この日本の不況を説明していました。いわゆる「合成の誤謬」というやつです。
ある会社が、借り入れしてある事業に投資を行い、それが失敗に終わった時は必死でその借金を返済します。一企業であれば当然のこと。
しかし、国家規模でバブル崩壊があり、それまでの企業投資がことごとく失敗となった場合は、ほとんどの企業が借金の返済に必死になります。そうすると投資の極端な縮小が生じて恐慌ということになってしまうという論理です。
経済社会は、一方に借金の返済を進める企業があっても、他方に借り入れを起こしても新規投資を行おうとする企業があって、全体として成長経済が営まれることで正常ということ。
しかしバブル崩壊はこれが崩れてほとんどが借金の返済に回ってしまうのです。
こうなると金融がいくら肯定歩合を引き下げてもまったく経済効果が得られず、不況からの脱出が極めて難しくなるということ。そしてこういう状況を示した教科書は皆無であり、どこの政府も対策が出来ないということで、彼はこのような状況のことを「バランスシート不況」と呼ぶことにしたのだそうです。
対策としては、返済されたお金を政府が借金して使い、景気の下支えをするしか方法は無いとのこと。それは金額などの問題ではなく、民間に投資循環が戻るまで続けなければならないということ。
そして日本は自民党時代にそれをやってきたため、不況にもかかわらずGDPの縮小は無かったことがグラフによって示されていました。
そしてこの説明を各国の政府からの要請で行ったところ、中共政府だけがよく理解し、日本のバブル崩壊後の金融政策を勉強し始め、そして現在適切な手を打っているため、中共の経済1人勝ちという状況が生まれている・・という説明でした。
そして、このような事態になると民主主義国家は脆弱になってしまうとか。独裁政権は、文句をいうやつは捕まえて投獄出来るから可能なのであって、民主主義国家は膨らむ国家の借金に不安を抱え、すぐに経済健全化を始めてしまう。これが不況から脱却できない原因であるとも述べておられました。
第二次世界大戦前、ナチスドイツがこの経済対策をやって1人勝ち。総統のヒットラーは神格化までされて、周辺の民主主義国家を蹂躙する判断をしたとか。アウトバーンのアイディアは芸術家ヒットラーのひらめきだったのでしょうけど。
対するアメリカはせっかくニューディル政策で不況対策にいい結果を得ながらも、途中で膨らみ上がる政府の借金にめまいを起こしてしまいました。国民もその数字に恐怖します。それに負けたルーズベルト大統領は経済健全化に切り替え、再び恐慌が戻ってしまったそうです。結果的には第二次大戦の膨大な出費が、やっとアメリカ経済を救うことになったということ。
一方のナチスは、周辺国の不況から脱しきれない国々を見ながら、ドイツの経済発展はドイツ・ゲルマンの優秀さによるものと勘違いを起こして、今なら周辺諸国の侵略戦争も可能と判断したことが、その後の悲劇を生んだということ。財政健全化を訴えるユダヤを強制収容所にぶち込んでまでも。
そして現在、独裁ゆえに1人勝ちする中共にもそういう傾向にあるということが心配だそうです。
漢民族の選民思想・中華思想が軍事力の増強を支え、南沙諸島への侵略とか尖閣列島への野心などが出てきていること・・・放置すればかつてのナチスと同じになるかも知れないという警鐘を訴えておられました。
対抗する手立ては一つ。周辺民主主義諸国も同じ手法で経済対策をすること。それしか無いそうです。
そして公共投資の先として、軍備増強が最もいいそうで、その理由は「それが何の役にも立たないことだから」と述べておられました。たとえば橋を作れば経済効果は確かに出ます。しかし、それまで「渡し舟」で生計を立てていた人は失業します。すなわちプラスメリットに対してマイナスメリットもあるということ。軍備にはマイナスメリットが出ないという説明でしたけど・・・
菅政権、武器輸出3原則撤廃を先延ばしにするそうですね。ほとんどの国民が支持しない社民との連立のために・・・。
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