香港政府は「緊急状況規則条例」を使って「覆面禁止法」を施行しました。
そして新界地区の警察官の拳銃発砲による犠牲者の少年を起訴しました。罪状は暴動罪などだそうです。やっと一命をとりとめた少年(曾志健さん、18歳)は、今度は裁判で争わねばなりません。
もともと週末の平和的なデモを散発的に行ってきた「逃亡犯条例反対デモ」は、政府と警察が押さえ込みを強めるたびに激化してきました。
そして政府を支持する商店や、自分達を構内に閉じ込めるためシャッターを下ろした地下鉄などに敵意をむき出しにして放火や破壊などを始めたのです。
この「逃亡犯条例」も、香港から台湾に旅行した男女が、何のイザコザか知りませんが男が女を殺害してしまい、香港へ逃げ帰ってしまったことから始まります。
台湾政府は香港行政府に「犯人の引き渡し」を求めましたが、犯人引き渡し条約が結ばれていない両政府なのでそれが出来ません。
そこでそれを結ぼうとした香港行政長官は、マカオや中共とも犯人引き渡し条約がなされていないことで、こちらとも結ぼうとしたわけです。
中共にとっては、そんなんものは無くても暗殺でも拉致でも自由に出来ますからどうでも良かったわけです。もともと法治国家ではありませんのであまり関心は無かったようですが、ここまでデモが激化してくると、もう黙っているわけには行かなくなりそうですね。
香港行政長官であるキャリー・ラム氏の北京への媚びが生んだ「香港デモ」とも言えるでしょう。
つまりキャリー・ラム長官は、香港にくすぶる中共への不満がふつふつと蓄積していることを何も知らなかったと言うことです。
「覆面禁止法」についてキャリー・ラム長官はテレビ演説で、放火や破壊活動について「前代未聞だ」と批判し、「こうした極端な暴力の状況こそ緊急法で覆面禁止法を制定した理由だ。最大の決心で暴力を阻止する」と今後強硬策に出ることを示唆しました。
警察は覆面をした違反者の拘束が認められ、今後1年以下の禁錮刑か2万5千香港ドル(約34万円)以下の罰金が科されるそうです。
これに対し、教育関係の男性(25歳)は「午後にニュースでマスク禁止を知り、腹が立って出てきた」と述べ「警察はこれまでも好き放題、市民を逮捕してきた。いまさら関係ない」とマスク着用を理由に逮捕される懸念について語っています。
またマスク着用の公務員男性(23歳)は「不正な法を守る必要はない。マスクは政府への不満の証しだ」と述べています。
覆面禁止法が施行された5日午後、デモ行進での沿道からのかけ声が、従来の「香港人がんばれ」から「香港人は抵抗せよ」に変わったそうです。
行進の終着地点で、マスク姿の男女2人が警官隊に取り押さえられ、身分証確認後に解放されたり、夜になって数カ所で集会が開かれましたが、そこでも複数人が拘束されたということです。
産経の矢板明夫氏によりますと、1997年に返還された香港は今年で22年目。「一国二制度」と言いながらも教育界に対して「共産党教育」を行い、「われら愛する中国共産党」「わが祖国は偉大だ」「特色ある中国の社会主義は素晴らしい」などといった共産党への賛辞がちりばめられた教科書で学ばされた若者が大量に社会人になっていると言うことです。
そして今回のデモの中心になっているのがこの世代の若者です。警官に撃たれた2人の若者は18歳と14歳ですし、それを支持する教育者も25歳です。
この共産党教育を受けた若者が、今、反中、反共産の最前線に立っているということに矢板氏は注目しているようです。
この香港の一国二制度は、最初の頃はまだ自由でした。そしてその頃からインターネットが普及し始めています。
1996年にフィンランドのNokia社が発売した携帯電話が「スマートフォン」と呼ばれた最初の機種でした。
香港返還が1997年ですからほぼ同時ですね。そしてそれから10年後の2007年にiPhoneが発売されています。
インターネット環境が自由であった香港は、いくら教育機関が「われら愛する中国共産党」「わが祖国は偉大だ」「特色ある中国の社会主義は素晴らしい」などと嘘八百を並べても、インターネットで情報を見ている若者には響かず、洗脳も出来なかったのでしょう。
現実と教育の格差、その上に矢板氏のいう「中共から香港の大学にやってくる共産党幹部の息子の裏口入学者」たちに追い出された香港の若者の鬱積した不満があることも確かです。
香港行政府は「マスク着用禁止」という強硬手段に出てきました。デモ側はそれでも怯まず「要求5項目」を掲げて戦う姿勢を見せています。
今後「外出禁止令」などの戒厳令に近い行政執行が行われる可能性もあります。
デモ隊と警察の衝突が人権弾圧にまで発展し、それでも中共が抑えきれなければどうするでしょうか。
10月が過ぎて、英国のブレグジットが実施されれば、英国が国際条約である「一国二制度」が蹂躙されたとして、中共に対し「返還協定違反」を訴えて来る可能性があります。「一国二制度なんてもうない」と言った習政権に猛烈に怒っている英国です。BNOパスポート(海外に居住する英国籍の人が持つパスポート)を持つ香港人も大勢いるようですからね。
そして世界中の大勢をガラガラポンして変えようと言うアングロサクソン・コンセンサスも背景で動いているはずです。(キーワードは「人権」のようです)
アメリカが大統領選挙で関税引き上げに躊躇する中、今度は英国が対中強硬策を受け継いでいくもかも知れません。
経済のリセッションが進むアメリカですが、国際的なサプライチェーンの組み換えが進めば、再び中共への関税アップが復活するでしょう。来年2020年はアメリカと英国がスクラムを組んで対中強硬策へと向かうかも知れません。今はアングルサクソンにとっても正念場なのです。
香港デモ・・・11月まで収まらなければ、今度は英米が戦略的に使いはじめるのではないでしょうか。
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