2018年6月17日日曜日

食い違う報道・米朝会談

6月12日に行われた米朝首脳会談では、その結果の報告が各国報道に違いがみられます。ここで、トランプ大統領の発言として報じられたものと、北朝鮮の朝鮮中央通信の報道の仕方を比べて見ます。

先ず、トランプ大統領の発言は・・・
◎70年前、ひどく残忍な紛争が朝鮮半島を荒廃させた。以来、戦争は終わっていない。今、我々は皆、それがまもなく終わることを期待できる。
◎拉致問題を提起した。非核化を除けば、これが間違いなく安倍首相の主要課題であることは認識された。
◎安全保障、兵力削減の可能性については、我々は何も減らさない。在韓米軍をいつか帰国させたいと考えているが、それは今ではない。将来の交渉が、進むべき態様で進まなくならないかぎり、軍事演習は停止する。軍事演習にはとてつもなく金が掛かる。
◎金委員長は、北朝鮮は主要なミサイルエンジンの試験施設をすでに破壊している旨述べた。
◎完全な非核化を実現するには長い時間がかかる。どれだけ時間がかかるかは不明だ。
◎検証は実施されるだろう。アメリカによる検証と国際的な検証の組み合わせとなろう。
◎制裁の解除は、核がもはや問題でないと確信できた時だ。何も進展しなければ何も変わらない。
◎非核化に掛かる費用は日韓が大いに助けてくれるだろう。米国は支援しなくても良いだろう。
◎適切な時期に訪朝したい。また、金委員長も適切な時期にホワイトハウスに招待したい。
◎来週から詳細に取り組む。ポンペイオ長官が、ボルトン補佐官と彼のチーム全体と共に、韓国と非常に緊密に連携している。日本とも連携している。そしてある程度中共とも連携している。
・・・と報道されました。

一方、朝鮮中央通信は・・・
◎朝米両首脳は、数十年にわたって持続してきた敵対的な朝米関係に終止符を打ち、朝鮮半島に平和と安定が宿るようにする上で重要ないびを有する実践的諸問題について率直な意見を交わした。
◎敬愛する最高指導者同志(金委員長)は、朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を樹立することが地域と世界の平和と安全保障に重大な意義を持つとし、さしあたり相手側を刺激し、敵視する軍事行動を中止する勇断をまず下すべきだと述べた。
◎アメリカ大統領はこれに理解を示し、朝米間で善意の対話が行われる間、朝鮮側が挑発と見なす米韓合同軍事演習を中止し、北朝鮮に対する安全の保障を提供し、対話と交渉を通じた関係改善が進捗するのに伴って対北朝鮮制裁を解除できるとの意向を表明した。
◎敬愛する最高指導者同志(金委員長)は、アメリカ側が朝米関係改善のための真の信頼構築処置を取って行くならば、わが方もそれに応じて引き続き次の段階の追加的な善意の諸処置取って行くことが出来るという立場を明らかにした。
◎朝米両首脳は、朝鮮半島に平和と安定、朝鮮半島の非核化を成し遂げていく過程で、段階別・同時行動原則を順守することが重要であることについて認識を共にした。
・・・としています。

さて、ここでトランプ大統領は「制裁の解除は、核がもはや問題でないと確信できた時だ。何も進展しなければ何も変わらない。」と述べているに対し、北朝鮮側は「対話と交渉を通じた関係改善が進捗するのに伴って対北朝鮮制裁を解除できるとの意向を表明した」とか「朝鮮半島の非核化を成し遂げていく過程で、段階別・同時行動原則を順守することが重要」などと述べております。

また、トランプ大統領の発言にある「非核化に掛かる費用は日韓が大いに助けてくれるだろう。米国は支援しなくても良いだろう。」と述べております。
これまでの北朝鮮の手口から見て、この非核化の費用を横流しして金委員長の私的利用をしてしまうのではないかと言う点が疑われます。
これが出来ない様な何等かの処置が今後の交渉で必要になるのではないでしょうか。

核弾頭と起爆装置の全てを北朝鮮から持ち出し、アメリカの核施設で解体するための費用なら、アメリカ側に支払えば済むはずです。また、施設解体の見積もりはアメリカか国際機関の立ち入りで行う以外、北朝鮮側の見積もりだけでは支払わないようにすることも必要でしょう。

また、これから拉致被害者奪還の交渉が日朝間で始まるわけですが、「全員帰国」に対して「死亡」とか「入国の形跡なし」という回答が来た時はどうするのでしょうか。
「どのような状況で死亡したのか」を調べるとして調査団の受け入れ(入国)を要求できるでしょうか。また、「入国の形跡なし」に対して日本側はどこまで入国の可能性を示す証拠を提示できるのでしょうか。

トランプ大統領は「制裁の解除は、核がもはや問題でないと確信できた時だ」と述べておりますが、確信できたときに拉致問題が解決していなかった場合は「我が国は資金を出せない」と述べることが出来るでしょうか。
そうなれば当然北朝鮮側は「日本が言い掛かりをつけて約束を果たそうとしない」とアメリカ側に訴えるでしょう。

金委員長は、アメリカの軍事制裁による危険が無くなれば、あとは何とか騙して金を取ろうとするだけでしょう。
そこを十分認識した上での日朝交渉でなければ、また騙されるだけです。聞くところ、すでに自民党議員の中には、日朝関係がもう改善されたような意識でいる議員がいるようです。交渉はこれからであり、この交渉こそが戦争であるという認識が無さすぎます。

普通であれば、交渉決裂した時に戦闘開始になるわけです。トランプ大統領はその認識を維持しています。安倍首相にも、このような議員の「お花畑」に踊らされることなく、交渉という戦場に向かって欲しいですね。

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