1月20日午後、自民党本部で開かれた政調幹部会議で、稲田朋美政調会長は全国農業協同組合中央会(JA全中)の指導権・監査権廃止を念頭に、「中央集権的な農業での地方分権を目指す」と述べました。
これはJA全中の指導権・監査権を廃止し、地域農協の自立性を確保することで農家の所得を向上させるという改革策なのですが、農林族議員を中心に党内の反発は強いのです。
稲田政調会長は、この族議員が持っている「改革案は農協つぶし」であるという考えに対し、「世間に広がっている『農協つぶし』のイメージが間違っている。間違っていることを間違っているといっているだけです」と応答しました。
稲田朋美議員は、かつては「靖国裁判」や「百人斬り訴訟」で、その虚偽性(全部「嘘」)を裁判で訴えていた保守系の弁護士でした。
その稲田弁護士を平成17年に政界に入れたのは、その時党幹事長代理を務めていた安倍晋三首相だったことはご存じのとおりです。
第2次安倍政権で、安倍首相は衆院当選3回だった稲田氏を行政改革担当相に起用、霞が関の抵抗が激しかった公務員制度改革を成し遂げました。
その辣腕を振えるか・・・その期待を持って今回は「岩盤規制打破の象徴」としての農協改革に立ち向かった稲田政調会長でした。
対する農協族議員達は、「農協改革の法案検討プロジェクトチーム(吉川貴盛座長)」を作り・・・
・なぜ監査権をなくせば農家の所得が増えるのか
・経済合理性だけで考えてはいけない
・中央会制度は維持すべきだ
との反対意見を掲げて、この改革に対抗しています。
現在の農協会員は約461万人(平成24年度の調査)で、選挙での農協の影響力は無視できません。「改革を急ぎすぎると、来年の参院選がどうなるか分からない」と農協の反発を懸念する声もこれら議員の間から上がっております。
問題となっているJA全中の「監査権」とは、各地域農協の財務諸表などをチェックする会計監査と、日常業務が正しく行われているかを点検する業務監査のことです。また「指導権」とは、監査で問題があれば、都道府県中央会の経営指導部署が農協に対して改善を指導することが出来るという権利のことです。
農協法に基づくこれらの権利は、地域農協に対し、JA全国監査機構の強大な影響力の源泉とされています。(強制監査権ですから)
このような権利を掌中に収めた「JA全中」が、どのようなことをしているのかは想像の域を出ませんが、JA全中による一律的な監査・指導が「地域農協の経営を縛っている」という意見は以前からなされていました。
安倍政権が検討する農協改革案は、この法的な権限を廃止する方針なのです。
「農協が地域の実情に応じ、自由に経営をできるようにし、衰退する農業の活性化を図る」ということですから、これで困るのは農家ではなく、JA全中の一部署であるJA全国監査機構であり、そこに勤める専門の農協監査士だけではないでしょうか。
安倍政権では、「農協の会計監査は株式会社と同様に外部の公認会計士に任せることにする」ということですから、現在「農協監査士」を行っている方々は、公認会計士の資格を取ってから個別に各農協と契約すれば良いのではないでしょうか。(勉強は大変でしょうけどね)
対するJA全中は、「農協の指導と一体になった監査は有効」として監査権の維持を主張しています。「農協の監査は株式会社の監査と違って独特だ」と説明し、公認会計士に任せることはできないとの訴えです。
農業は、他の産業とは少し違います。何を作るか、市場性はどうかだけでなく、気候に左右され、成長を待つことで生産時間が工業とは異なります。
また、作り過ぎれば価格が下落し、流通ルートも保存もお金がかかりますし長時間は無理なものです。
ですから独特な会計監査になることは否めません。
露地の畑でゆっくりと育つ植物は、それが「在庫扱い」なのか「生産ライン」なのかの判断も、他の工業生産品とは違うはずです。
出荷された商品は市場で価格が付けられますから、それまでは簿価も判りません。もし在庫にしたところで、その簿価は判らないのです。
それに適した課税方式も必要でしょうし、それに合わせた会計制度も必要なようです。
一律な商業会計や工業会計では無理かもしれませんね。
だからといって衰退する農業は救わねばなりませんし、その足を引っ張っているのがJA全中の強制監査権であるならば、それは改めるべきでしょう。
目的は「日本農業の活性化」にあることを再認識し、農業会計のあり方を吟味し、強制監査権などなくても「創造的農業の活性化」が実現するような改革を行って欲しいものです。
(商業会計や工業会計は聞いたことがありますが、農業会計ってあるのでしょうか?)
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