ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表が、世界人権年鑑2020で「中共政府は人権擁護のグローバルシステムを激しく攻撃している」と警鐘を鳴らしました。
「世界中の人びとが自由に発言し、恣意的な投獄や拷問を恐れずに生活するなどの様々な人権を享受することを可能にした過去数十年の前進が危険にさらされている」という訳です。
さらに「中共政府は長い間、国内からの批判に弾圧でこたえてきた。そして今や、その検閲を世界の隅々にまで広げようとしている。どこでもそうであるように、中共国内でも多くの人びとが尊厳をもって自由に生きる権利を望んでいる。ところが習近平政権は、ここ数十年のなかでもっとも残忍かつ広範な弾圧に手を染めている。」と矛先を習近平主席に向けます。
「中共政府は弾圧の根幹ともなるテクノロジーを開発。DNAサンプルの強制的な収集などのツールを通じて市民のプライバシーに入り込み、ビッグデータ解析や人工知能を駆使して統制手段の改良を重ねている。目標は政府に対する異論なき社会の構築だ。」と現在の中共の実施している悍ましい行為を指摘します。
さらに「中共政府は、国内での圧倒的な弾圧に対する世界からの反発を回避するために、人権を守る国際機関を弱体化させる取り組みを大幅に強化してきた。たとえば、自国のイメージを守り、人権侵害の批判をかわすために、国連の場で他の加盟国を繰り返し威嚇してきた。表向きは人権を支持しつつ、現実には中共内の富にアクセスすることを優先する政府、企業、さらには学術機関を求め、かつ求められる関係にしてしまう。これらの国や企業は中共政府の弾圧に公然と反対することで、世界経済の16%を占める同国市場での機会を失いかねないことをよく知っているからだ。」と、まるで日本企業をみているような言い回しです。
批判は続きます。「(それゆえに)中共政府当局は人権擁護を謳う国々から代償を払わされることはほとんどなかった。欧州連合はブレグジットに振り回され、民族主義的な加盟国による妨害や移民をめぐる意見の相違から分断された状態だ。加盟国政府が個別かつ率直に中共へ異議を唱える場合もあるものの、強力な共通の姿勢をとることができないでいる。米政府は新疆の公安局と中共のテクノロジー企業8社に対し、人権侵害を理由に制裁こそ発動しているものの、トランプ大統領は習国家主席を前向きに受け入れているのが現実だ。」と、こんどはトランプ大統領をも批判します。
これまでこのヒューマン・ライツ・ウォッチは、中東やロシアの民間人攻撃や病院爆撃を非難してきました。アメリカ、特にディープステートの代弁をする機関の様に見えていました。
それは今も変わってはいないようです。ですからトランプ大統領も批判するのでしょう。が、さらに今回はグテレス国連事務総長を名指しで批判しています。
「中共にイスラム教徒(特にウイグル族)拘束をやめるよう表立って要求せず、巨大経済圏構想『一帯一路』を称賛している」と批判したのです。
もともと国連もヒューマン・ライツ・ウォッチというNGO組織も、同じ「国境を低くしたい連中」ですから、このケネス・ロス代表のグテレス総長批判は「内部分裂」を想起させます。中共の習主席批判が、こうして内部分裂の形で起きるのかも知れません。
現状を見ますと、国連はかなり中共に乗っ取られていますからね。
このケネス・ロス代表のグテレス総長批判に対して、ドゥジャリク事務総長報道官が反論します。
「グテレス氏は昨年、新疆ウイグル自治区の問題も含め、中共当局者との間で何度も問題を提起した」と述べています。
しかし中共に乗っ取られつつある国連の悲しさか、ドゥジャリク報道官は「中共の統一性の尊重、テロへの非難、テロとの戦いにおける人権の尊重を重視している」などと、習主席に阿る答え方をしています。
「中共の統一性の尊重」は明らかに「一国二制度」容認発言になるでしょう。そしてこれに反対する勢力を、(中共)国家分裂主義者として弾圧することを容認する発言になってしまうことはドゥジャリク報道官にも判っているはずです。
安倍首相も同じかも知れませんが、どうしても中共の居丈高な態度と恫喝で、中共に阿る発言をしてしまう政治家(国連総長なども含めて)が多いようです。
このような世界政治の環境の中に合って、ケネス・ロス代表は「国際人権システムが人権侵害に対してまともなチェック機能を果たし続けられるようにするためには、世界各国が一丸となって中共政府に対抗しなければならない。」と的確に語っています。
そしてその例として「イスラム協力機構(OIC)がミャンマーで迫害されたロヒンギャ・ムスリムの時のように、新疆ウイグル自治区のムスリム弾圧にも異を唱えれば、中共政府は圧力を感じるだろう。」と述べています。
さらに「各国政府および国際金融機関は、中国政府の「紐付きでない」融資および開発援助に代わる説得力がありかつ権利を尊重したもうひとつの援助のあり方を示すべきだ。企業および大学は、中国問題に対処するため、しっかりした行動規範を起草・促進すべきだろう。」と今後の各国の取るべき行動を示唆しています。
「強力かつ共通の行動規範があれば、中共政府が基本的な権利と自由に立ち向かう人びとに報復することはより困難になる。人権にコミットした指導者たちは、国連安全保障理事会で新疆問題を議題にすべきだ。そうすれば、中共政府当局は、人びとを迫害しながら尊敬を手に入れることはできないと理解するだろう。」と述べています。しかしすでに中共に乗っ取られつつある国連で損安ことが可能かどうか、ちょっと疑問ですけど。
最後に「人びとが大君主の気まぐれで操られ、あるいは捨てられる駒にすぎなかった時代に逆戻りしたくなければ、私たちは権利に対する中国政府の攻撃に抵抗しなくてはならない。過去数十年の権利をめぐる前進、そして私たちの未来がそれにかかっている。」との言葉は、その通りだと思うのですけど・・・
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