2014年10月24日金曜日

テキサス親父のテキサス魂

1970年頃、テキサス魂という西部劇がありました。ジェームズ・スチュアートとヘンリー・フォンダが演じたちょっとコミカルな西部劇は、テキサスのカウボーイがワイオミング州シャイアンにある社交クラブの相続をすることになり、そこから地元ヤクザとのいざこざと、さらに発展した対決を描いたもので、社交クラブと言うのが実は「売春宿」だったという記憶があります。

相続したジェームズ・スチュアートは、最後にそのクラブをそこで売春をやっている女性たちに譲り、自分は再びテキサスのカウボーイに戻るというエンディングでしたね。
英雄的なものは無く、しかし人としてやさしく売春婦たちに接する主人公の心意気と、テキサスに対する郷土愛がテキサス魂と言うものを表現していました。

今回、テキサス親父ことトニーマラーノ氏が乗り込んだのはカリフォルニア州グランデール。もちろんここにある慰安婦像の問題を訴えるためです。
相当勇気が必要な訴えですが、自分の信念からパブリックコメント制度を使っての意見陳述でした。
内容が慰安婦なだけに、「テキサス魂」を彷彿とさせます。テキサス魂はまだ残っていたんだ・・・!

このパブリックコメント制度は、事前に届け出れば、誰でも市議会に意見を述べることができる制度で、グレンデール市民以外でも参加できるのだそうです。
マラーノ氏は、反日的な韓国系住民が騒がないように、非公表でグレンデール市を訪れました。グレンデール市議会は彼を受け入れ、そしてマラーノ氏は慰安婦像設置に賛成した市議らを前に静かに話し始めたそうです。

「あなたたちの目的は尊い」とマラーノ氏は話し始めます。女性人権問題を重視し、性差別を無くそうとするグレンデール市議会に、先ずはエールを送ります。
それから、「だが最近、韓国で新しい慰安婦のグループが、自分たちの政府に1950年から1992年の間に強制的に慰安婦とさせられたと言っている。」と続けました。

朝鮮戦争以後、在韓米軍基地周辺で米兵を相手に売春をさせられたと主張する100人以上の韓国人女性らが今年6月、韓国政府に賠償を求める訴訟をソウル中央地裁に起こしたことを引き合いに出したのです。

その上で、「この新しい慰安婦のグループのために2つ目の像を考えたらどうだろうか」と述べたのです。すなわち韓国系アメリカ人がその像を建てる前に、グランデール市が先にこのアメリカ軍の犠牲になったという慰安婦の像を建てることによって、今ある慰安婦像が、日本を侮辱する目的で設置したわけではないということを証明できる・・・と言うわけです。

「グレンデール市は、日本や、日本の人々に対し一貫性があることを表明するチャンスだ」と提案したわけです。
「今ある慰安婦像は日本人を侮辱している」と言うのがマラーノ氏の感覚ですが、それを承知で市議会が建てたのなら、アメリカ軍を侮辱する在韓米軍の慰安婦も同じように扱わないと不公平だ・・と言ったわけですね。

話を聞いていたグランデールの市議の中には、在米日本人らの反対意見や撤去要求に対し「なぜ、過ちを認めないのか」などとヒステリックに反論していた市議らも居たそうです。しかし彼らはマラーノ氏には何も言いませんでした。言えなかったのでしょうね。
彼らはマラーノ氏に「サンキュー」とだけ述べたそうです。

マラーノ氏のこの提案はよく考えて作ったものなのでしょう。「慰安婦像を撤去せよ」などと言うのではなく、アメリカ軍も同じことをしているのだから、それを侮辱する像を建てなければアンフェアだ・・という視点、いかにもテキサス魂ではないでしょうか。

もしアメリカ軍を侮辱する像が建てられたら、さらに他の軍事売春婦の像も建てられる可能性があります。やがては韓国軍のベトナムにおける非道な振る舞いを指摘する像も建てられるかも知れません。

今の慰安婦像が女性人権問題を重視するための像であるならば、当然他国にもあるそのような像を続けて建てることは必然ではないでしょうか。
そして建てられれば建てられるほど、日本の「性奴隷」の位置づけは薄まって行きます。

もしグランデール市議会が賢いならば、このマラーノ氏の提案を受けて、「このような像を建て続けることは、単に憎しみを掻きたてるだけだと思う。それは我々の主旨とは異なるものだ。したがってそのようになるであろう慰安婦像は好ましくない。撤去を命じる」とするでしょう。

何だか、テキサス親父の中に、若いころ見た良きアメリカの残影を見たような、そんな気がしました。
奇妙に明るくて、極めて単純でしかも粗野で、そして正直でフェアな・・・私の好きだったジョンフォードのアメリカを・・・

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