3月15日、安倍内閣はTPP交渉への参加を表明いたしました。TPP交渉とは、一応貿易交渉のような体裁を取っていますが、アメリカの意図を読めば、要するに「参加国に対するアメリカの法、慣習の押し付け条約」というような色彩の濃い条約です。
経済破綻国家のアメリカが、生き残りを掛けて取り組む交渉で、アメリカのエゴイズムがむき出しのまま、すでにある程度交渉は進んでおります。
そしてアメリカは年内に妥結させ、TPPに則った貿易を始めるつもりです。このスケジュールですと、今、日本が参加表明しても交渉のチャンスは9月の会議だけです。
それでも安倍政権は「守るべきものは守る!」と言い切っていますが、そこまで交渉力があるのでしょうか?
日本がアメリカに弱いのは、あくまでも我が国の防衛を依存してしまっているからです。
自衛隊の装備もアメリカと連動していて、日米同盟が機能しなければハイテク兵器は使えません。裏で中共に手を回しながら、日本の侵略危機を作り、安倍政権に圧力を掛けてTPP交渉参加をさせているという・・憶測も浮かんできます。
安倍・自民党は、TPP交渉において「守るべきもの」を明確にしています。
1) 「聖域なき関税撤廃」が前提ならば交渉参加はしない。
2) 自由貿易の理念に反する「数値目標」などは受け入れない。
3) 食の安全安心の基準(もちろん日本国内基準でしょうね)を守る
4) 国家の主権を損なうようなISD条項には合意しない。
5) 政府調達(公共投資のことでしょう)、金融サービスは、我が国の特製を踏まえる。
という5項目が挙げられました。
さて、この中で最も優先順位が高いのが4番です。
ISD条項とは、もともとは先進国が途上国に投資を行う場合、投資家の保護をするための2国間協定でした。アメリカのFTAとか日本のEPAでもこのような条項を入れて途上国への経済支援を行っています。
これをTPPに持ち込むのは、トラブルが発生した場合の民事訴訟を、アメリカ国内で行うようにするためです。そしてアメリカ国内での裁判では、ほとんどのケースでアメリカが勝訴し、莫大な違約金などが請求されるわけです。
これが主権の侵害になるのは、各国の法体系が無効化されるからで、法体系が未熟な途上国ならともかく、産業先進国同士では各国の特製が重んじられるべきでしょう。
この中には、「ラチェット条項」が含まれています。ラチェットとは、自転車の後輪のチェーン歯車に着けられた前進方向しか力を伝えず、ペダルを逆転させても力が伝わらないようにした装置(機構)のこと。
つまり、一度条約を結んでしまえば後戻り(脱退など)が出来ないという恐ろしい条項です。
アメリカのFTAで、この条約で嵌められたカナダや韓国は、これからどうするのでしょうか? アメリカは「してやったり!」というところでしょうけど・・・
このように、アメリカのエゴをむき出しにした交渉で、主権などおかまいなしに押し付けるのがアメリカ流です。中華思想とは違って条約は守るアメリカですが、その条約締結に至るまでのエゴイズムは世界的に嫌われているようです。
1995年に、このような意味合いを世界貿易機関(WTO)に持っていこうとしたアメリカ、インド等が猛反対してアメリカの野望は挫かれました。
1998年に挑んだ欧州の経済協力開発機構(OECD)でしたが、フランスが猛反対、結局この時もアメリカの野望は挫折しています。
2003年にも、南北アメリカ大陸自由貿易協定(FTAA)にアメリカの野望を入れて挑戦しましたが、ブラジルが猛反対して、この場合は中南米共同体(CELAC)が作られてアメリカが外されたのです。
このアメリカのエゴを、自由とすり替えて迫るという常套手段、2013年についに日本に向けられて行動を起こしたのです。
アメリカの思惑を知っている安倍内閣。しかし防衛というウィークポイントが少し心配です。少なくともISD条項だけは猛反対して阻止して欲しいですね。そのためには、オーストラリアと共闘するのが良いと言う考え方もあるようです。
自由主義とはフリーダムであってエゴイズム(利己主義)ではないと言うこと、ぜひアメリカの圧力団体に教えてやりたいものですね。
アメリカの金融、保険、医療制度などだけに有利なTPP。アメリカの経済回復にはほとんど役に立たないはずです。アメリカの中産階級は当然TPPには反対のようですよ。そのことをもっと強調しましょう。
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