2017年10月9日月曜日

新型経済が台頭しているのか?

デフレ克服を掲げる与党自民党ですが、どうやら物価が上昇しないのは日本だけではないようです。
今年6月の時点で、物価上昇率が前年同月比1%に満たない国は、日本をはじめ15カ国に達したとか。(国際決済銀行の調査)

しかも経済が回復し雇用が改善しているにもかかわらず、賃上げと物価上昇につながらないことが特徴だそうです。

FRBのイエレン議長は、「謎というほかない。何が原因か、はっきり分かっているとはいえない」と述べました。
アメリカでは2009年7月に始まった長期の景気拡大局面が続いていますが、個人消費支出物価指数の上昇率は8月まで6カ月連続で1%台と低迷し、FRBの目標「2%上昇」に達していません。

欧州も緩やかな景気回復が続いていますが、消費者物価指数は5月以降、1・3~1・5%で欧州中央銀行(ECB)が目指す「2%弱」に届かないそうです。

我が国も安倍政権が始まった2012年12月以降景気拡大が続いておりますが、消費者物価指数は0%台で低迷し、日銀の「2%」目標はまったく届いておりません。
財務省の消費税8%が5年経ってもまだ重くのしかかって0%のようですが、それが無くても1%台だったように思います。

現在、次の3つが原因として挙げられているようです。
1・原油安
2・新興国からの安価な製品の流入
3・販売コストがかからない電子商取引(EC)の拡大

世界経済が16年夏ごろから回復し失業率が低下しています。しかし各国の企業は賃上げして人を雇う機運が盛り上がっておりません。
ですから賃金が上がらず、結果として消費拡大による物価上昇につながっていないということだそうです。

この「謎」は、おそらく従来型の産業経済学では解明できないでしょう。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは、「ギグエコノミーの台頭」が原因だろうと述べております。

ギグエコノミー(Gig Economy)のGigとは、もともと「ジャズやロックなどで、それほど親しいわけではないミュージシャン同士が、音合わせを兼ねて、その場限りの演奏(単発ライブ)を試しにやってみる」という意味です。
これを転用した経済用語で「単発の仕事」による経済ということになるそうです。ようするに「日雇い技術者」というような感覚ですね。

雇用を必要としない事業体系で、発注者と受注者が単発で仕事を行なう事業体系です。
現在はアメリカで始まっていて次のようなギグエコノミーがあるとか。
・UBER(ウーバー):配車サービス
・TaskRabbit(タスクラビット):便利屋サービス
・Airbnb(エアビーアンドビー):宿泊施設仲介
・BreezeWorks:ビジネス管理アプリ
・Amazon Home Services:家まわりのメンテナンスサービス

これを見ますとまだ製造業にはギグエコノミーは入ってきていないようですね。
しかし我が国の江戸時代の職人の仕事のやり方が、製造業のギグエコノミーに合致してるように思います。
産業時代は、大きな設備を持って量産効果で経済を盛り上げていましたが、このビジネスモデルが破綻してきたことがギグエコノミーの背景にあるのではないでしょうか。

コストダウンを図り低価格戦略に乗っ取った商品は修理不可能になっています。部品交換よりも買い替えの方が安く上がるからですね。
これによって家電などは廃棄にお金がかかるようになり、結局は高いものを買わされているのかもしれませんけど。

今後は修理可能な高額商品の方が売れるかも知れません。修理のマニュアルや部品の供給といったコスト高になる部分は、ネットでの販売やギグエコノミーの従事者たちが請け負います。

今後ギグエコノミーが拡大してくると、その評価や消費者保護のあり方も変わってくるかと思います。
法の整備や量産製造業のあり方も変わってくるでしょう。そして何より経済の指標も大きく変わる必要があるように思います。

人気のあるギグ商品(サービスも含む)は価格が上がります。しかしそれが全体の物価指数を上げることはないでしょう。
人件費も(モノづくりもサービスも営業も)技術力によって差がついてきます。平均した人件費は意味を持たなくなるかも知れません。

国民すべてが「タレント」になることを強制される・・・それがギグエコノミーの社会かも知れませんね。

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