日銀は、半年ごとに「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」というものをまとめ、その時、機関投資家とかエコノミスト4~50人に対して説明会を開いているそうです。
10月31日に行った10兆円の追加金融緩和処置に対して、日銀はその日の夕方に日銀の大会議室で、この“サプライズ緩和”の内容を説明する会を開いたとか。
そしてその会が殺気だった雰囲気となり、2時間も質疑応答が続いたそうです。
「直前までのアナウンスと全然違うじゃないか!」とか「(国債を買い占めて)債券市場を壊す気か!」などの怒号も飛び交い、黒田総裁への不信感が表出し、いらだちを抑えきれない機関投資家などが厳しく企画局長らを問い詰めていたとか。
黒田総裁は、10月上旬には追加緩和の必要性を否定していました。10月中旬、何度も国会に呼ばれていましたが、2年で2%の物価目標への「道筋は順調」と述べるに留まっていました。
この黒田総裁が、市場の意表を突くように突然「追加金融処置」を発表し、しかも10兆円という巨額(そうでもないですけど)の供給を発表したわけです。しかも長期国債の年間買い入れ額を約30兆円も増加しました。まさに「黒田バズーガ炸裂」だったわけですね。
意表を突かれた市場は、急激に株高が進み、あっという間に日経平均が800円も上がり、そして円安が急速に進みました。
「黒田さんの言葉を信じていたのに、恥をかかされた」などと述べているエコノミストも居たそうです。
市場というのは、金融の場合は一種の鉄火場です。騙された方が悪いという場所でもあります。日銀総裁という立場は、エコノミストや機関投資家の為にある役職ではありません。
日銀総裁は日本経済を通貨発行の立場から考えるのは当たり前です。消費税8%へのアップで日本経済は再びデフレの瀬戸際に立たされていることは間違いありません。
黒田総裁は金融緩和の影響を大きくするために、市場にショックを与えたのでしょう。エコノミストや機関投資家から「恨み節」が聞こえるのは、それが成功だった証しですね。
消費税10%をどうするか、それは安倍首相の12月まで待たなければなりませんが、消費税は非常に大きな消費抑制効果を持っています。過度にインフレが進めば、その抑制効果は抜群でしょう。
しかし、デフレの時に消費税アップを行えばハイパーデフレになってもおかしくありません。今回の8%へのアップは、やっと立ち直りかけていた日本経済を再びデフレへと引き戻し始めたのです。
民間消費の落ち込みは半端ではありませんでした。財務省はそれを気付かせないように、さまざまな嘘八百を並べ、来年の10%を実現しようと画策しています。
しかし、黒田総裁は気が付いたのでしょうか、再びデフレの恐怖が迫っていることを。
機関投資家は、安全第一ですから国債での資金運用を行います。年間の金利が約束されていて、市場でもそれほど値動きが無いからでしょう。
しかし、黒田バズーガはその国債を市場から消して、新たな国債を発行可能にしているわけです。国債市場が乱高下するかもしれません。しかしそれは年金や保険金を運用する機関投資家にとって問題なだけです。
日銀は今、日本の経済を成長路線に乗せることを使命としているのです。通貨を発行し、政府国債を買い入れ、政府に出来た資金を公共投資に回すことでデフレ脱却を図っています。
それはまだ民間に購買力が付いていないからです。少々の公共投資ではお金は回りません。土木建築関係の事業所は借金漬けになっているはずですから。(土建業だけではないですけどね)
企業であれば、政府の仕事で得た利益は、給与に反映させる前に借金の返済に回すでしょう。
結果的にはその借金を(政府系の仕事を出すことで)政府が吸い上げ、吸い上げた借金を日銀が引き受ける(国債を買う)ようにして借金を減らすわけです。
企業に余裕が出てくれば、賃金が上がります。そこでやっと民間の購買力が出て来るわけです。あとは財務省に任せてもいいのですが、ここまでは政府と日銀だけの仕事であることは理解できますよね。
お金の価値も所詮相対的なもの・・・これがアベノミクスなのです。財政均衡主義などというのは過度のインフレ時に言う言葉ですね。デフレの時は意味を持ちません。
賃金が上がっても、物価も上がりますからそう裕福感は無いでしょう。しかし必要とそうでないものの選択の幅は広がるはずです。どうでも良い日用品の買物は安い量産品、自分にとってこだわりのある物は専門的で高価な物・・という選択です。
物価が上がり、賃金も上がり続ければ、預金は目減りすることになります。逆に借金は金利を払っても相対的に得になります。住宅ローンとか自動車ローンなどが活性化して、高額商品が売れるようになってきます。つまり民間需要が出て来るわけです。
政府は借金を止められます。そして税収も増加します。消費税8%で、相当の税収があるはずです。インフレは調整しやすいですね。これまでの国債発行残を償却して行けばいいわけですが、これは個人の借金返済とは違うことをご理解ください。国債償却をコントロールすることでインフレならコントロール出来ると言うだけです。
2年で2%の物価上昇ということは、10年で1割物価が上がることを意味します。つまり借金すれば10年で1割のプロフィットがあることになります。もちろん預金は1割目減りするわけですけど。
これに対して貸出金利がどうなって行くか、いづれにせよ、こうして未来が出来ていくわけです。若者は未来を信じて働くことが出来ます。
このようにうまく行く、その第一歩がこの黒田バズーガだった・・・となって欲しいですね。
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