2015年8月21日金曜日

大成功、「こうのとり」の打ち上げ

8月19日の夜、種子島宇宙センターから国際宇宙ステーション(ISS)に向けた物資の補給をミッションとする「こうのとり」が、三菱重工のH2Bによって打ち上げられました。
見事な打ち上げで、日本の総合技術力を世界に見せた形となっています。

アメリカは民間委託にしてから、昨年10月にシグナスが失敗、今年6月もドラゴンが打ち上げに失敗しています。
ロシアはこの4月にプログレスの打ち上げに失敗しています。安定した打ち上げを続けているのは日本だけのようですね。

輸送能力6トンというH2Bロケットは、現在のところ世界最大で、大型バス1台分ほどの積載スペースがあると言うことです。
今回搭載した物資の中で、最も重要なものは「人体から出た廃棄物を再び飲料水に変える装置」だとか。つまり地球の自然界が普通に行っていることを宇宙ステーションの中で行う装置で、フィルターシステムということでしょうか。
打ち上げ失敗が続いたことから、現在ISSは危機的状態になっているようです。今回のこうのとり打ち上げは人命救助の役割もあるのかも知れませんね。

安定した打ち上げを誇示するH2ロケットですが、問題はその打ち上げ費用。現在は1回の打ち上げで150億円とかなり割高のようです。
各国の失敗も、費用を出来るだけ掛けないように工夫しているようで、それが失敗の原因なのでしょう。

スペースシャトル退役後、国際宇宙ステーション(ISS)に大型物資を運ぶ唯一の手段として開発されている「こうのとり」です。しかしこの費用の高さが問題で、あと3回だけの打ち上げは決まっているものの、その後の計画は白紙状態だとか。

さらに、こうのとりはISSに物資を運んだあと、不要物を詰めて大気圏に落とし燃え尽きさせる機能しかなく、再利用のために地上で回収するように改良する必要もあると言うことです。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は将来の有人宇宙船への発展も視野に帰還型の開発を目論んでいるようですが、その実現の筋書は出来ていないとか。
そういえば、前回のこうのとりの大気圏再突入(廃棄処理)時の各種センサーによるデーター収集で、帰還型の設計情報を入手することが目的として挙げられていましたね。それは出来たのでしょうか。まだその発表はありませんけど・・・(秘密なのかな?)

もしかしたら、あと3回の打ち上げ以降は、帰還型に改良するのでしょうか。地上の滑走路(例えば下地空港)などに誘導出来るようになっていればいいですね。もちろん無人ですけど。
こうして人間を乗せて上げたり下げたり出来れば、ISSは日本の独壇場になるかもしれません。もっとも費用が問題にはなりますが。

この、コスト問題が発生したのは、ISSでの実験が当初期待された、産業振興につながる目立った実験成果が「出ていないこと」にあるようです。
ISSが始まった頃は、新薬の開発とか高精度の冶金技術、合金技術などが考えられ、地球上では重力があるために作ることの出来ないものが作れるのではないか、と期待されていました。

しかし、当然それが量産に結びつくわけもなく、宇宙実験室内で可能でも産業化は不可能などのこともあり、なかなか経済効果のアイディアが出てきませんでした。
応用物理や化学、そして生化学などの情報は確保できるものの、これら理学系では経済効果まではいきません。次第にISSの発想そのものに疑問が出てきています。

そこで民間委託にしたり、安い打ち上げを模索している他国の宇宙開発は、宇宙観光を可能にして、宇宙を「儲かるフロンティア」にしようという考えなのでしょう。
しかし、そんなに甘くはありません。重力の井戸から地球人を持ち上げるのは、やはり相当な金がかかるわけです。

人工衛星の打ち上げは、H2Aロケットで一度に複数の衛星を打ち上げたりして、そのコストを下げることに苦心していますが、かといってそれほど衛星打ち上げ需要があるわけでもないでしょう。
安く打ち上げるために、イプシロンロケットという固形燃料ロケットをJAXAとIHIエアロスペース社が開発しましたが、それでも一発30億円かかります。

むしろ宇宙に上げられた古い衛星が、大きなスペースデブリ(宇宙ゴミ)となってしまい、その危険性が議論される時代になってしまいました。
爆破しても粉々になるだけで、かえって微小なデブリとなり危険性が増すことも判っています。

このように多くの問題を抱え始めた宇宙開発ですが、それでもおそらく人類は宇宙を目指すでしょう。何故なら、そこにドラマがあり、そして感動があるからです。
スプートニックの打ち上げ以降、アポロ13号、スペースシャトルの初飛行、ハヤブサの帰還など、良くも悪くも我々に感動を与えてきました。

宇宙開発におけるほとんどの問題は経済的なものです。コストの削減も必要ですが、宇宙需要の喚起も重要なテーマです。
そしてこれらを解決していくには、やり続けなければなりません。世界不況が叫ばれる中、各国とも金のかかる宇宙開発には二の足を踏み始めました。だからこそ日本が頑張る必要があるように思います。

液晶技術もレーザー技術も、他国が経済的に引き合わないと考えていた技術でした。しかしそれを最先端技術として展開したのは日本の企業であり、世界各国もあわてて追従し、現在に至っているわけです。
このように、あきらめない日本(Not given up Japan)こそが、大和魂の神髄ではないでしょうか。

三菱重工にもIHIにも、「八紘一宇」の精神で頑張ってほしいですね。

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