南シナ海のスービ礁で、中共によって埋め立てられた面積が「約300ヘクタール」になったとフィリピンの外務省が発表しました。東京ドーム約64個分に相当するそうです。
環境破壊だの何だのはちょっと置いておき、このことから国際社会が反発を強めだしたことを重視したいと思います。
フィリピンのデルロサリオ外相は、ASEANの会議で中共を「北の隣人」と呼びながら「ASEANとして即刻中止を求めるときではないのか」と加盟各国に呼び掛けました。
中共との経済的な結び付きを重視するマレーシアは慎重でフィリピンと意見対立もありましたが、フィリピンのアキノ大統領とベトナムのグエン・タン・ズン首相は中共による実効支配に懸念を共有、ASEAN会議では「信頼を損なう」などとする中共非難の議長声明を発表しました。
これに対して中共側は、「南シナ海問題は中国とASEANの間の問題ではない」と反発し、当事国同士の話し合いでの解決を主張しました。
洪報道官は、「中共は一貫して、歴史の事実と国際法を尊重するという基本のもと、関係する当事国との協議を通じた問題解決に力を注いできた。この問題については極めて抑制を保ってきた」などと語り、「一部の国家が、自らの利益のために中国とASEANの関係を壊そうとすることに断固として反対する」として南シナ海の問題を自国よりも弱い国家との話し合いを強調したようです。
この「弱い者いじめ」を前提にした中共の姿勢に対処するためには、各国が協調して対峙することが有効であることが明確化したわけですね。
アメリカ国務省のラスキー副報道官代行はこの問題に対して、「地域を不安定化させるものだ」と中共を批判しました。しかし、緊張が高まらないよう中国と関係国の双方に「平和的、外交的手段」による解決を求めております。
そしてアメリカは、この中共による埋め立てが「国際社会全体への直接的な挑戦だ」としています。
ハリス米太平洋艦隊司令官は、「この数カ月間、しゅんせつ船とブルドーザーで砂の万里の長城を築いている」と批判しておりますし、オバマ大統領は「フィリピンやベトナムが中国ほど大きくないからというだけで、黙って小突かれてよいことにはならない」と述べております。
ラッセル米国務次官補は、「(このまま国際法無視の行動を中共が続けるなら)2016年の次期米大統領選で争点となり、米中関係に悪影響を与える可能性がある」と述べました。
安倍首相は、先に開かれたバンドン会議で「強い者が弱い者を力で振り回すことはあってはならない。法の支配が、大小に関係なく国家の尊厳を守るということだ」と強調しております。
この戦いは、ASEAN、アメリカ、そして日本が主張する「南シナ海の国際法遵守」が勝つのか、それとも中共が主張する「関係する当事国との協議を通じた問題解決」が勝つのかという戦いになってきました。
もちろん東シナ海にも共通する問題であります。
国際法は慣習法であると同時に、各国がそれぞれ締結している条約をベースとして成立している法体系です。
ですからすでに世界が行っている海洋占有に関する慣習法で考えるならば、南シナ海から中共は出ていくべきでしょう。しかし、各国の条約を重視するならば中共とフィリピン、あるいはベトナムなどと締結されている条約で判断されるものだと言うことになります。
中共が「当事国との協議」を主張しているのは、現在は各国間での南シナ海の条約が無いからでしょうね。無ければ国際法、即ち世界的に使われている判断基準が適用され、中共の行為は国際法違反となるはずです。
という訳で、中共はフィリピンやベトナムに圧力を掛けます。2国間での条約を締結すれば、それが国際法では優先されるはずですから。
その圧力の核となるのが経済問題ではないでしょうか。ベトナムなどは中共の経済に大きく依存していますし、マレーシアなどもそのようですから。
そしてそうなってしまった原因を作ったのは我が国の経済界であることも事実です。
習政権は、この経済依存の枠組みを欧州まで広げようとしています。それがAIIBではないでしょうか。そして日米もこの枠組みの中に入れて、日米のお金を使って中共がADBから借り入れている借金の返済をしようと考えているのかも知れません。
習近平主席の巧みな戦略が見えてきます。
現在のところ、南シナ海を巡る当事国の条約は締結されていないようですし、日米がAIIBに加盟する動きもありません。
つまり現行の国際法によって南シナ海の中共の主張を覆し、南シナ海から中共を締め出すことは可能です。
ですからASEAN諸国、アメリカ、日本、そしてオーストラリアなどが中共を包囲すれば良いのです。
問題は、どの国が国際法遵守のための武力の行使を行うか、なのですけど・・・
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