2015年10月29日木曜日

遂にアメリカ駆逐艦が南シナ海へ

10月27日午前10時、横須賀基地所属のイージス艦「ラッセン」が、中共が「領海」と主張するスプラトリー諸島の人工島から12カイリ(約22キロ)内の水域に入ったと、ロイターが伝えました。
当局者の話では、「ミスチーフ(美済)礁とスービ(渚碧)礁の付近での哨戒活動だ」としているそうです。

そして、アーネスト大統領報道官は「航行の自由は世界の経済活動にとり死活的に重要だ」と述べ、国防総省のデービス報道部長はスプラトリー諸島周辺海域での米軍の活動について、「中共へ通告する義務はない」との認識を示し、「海洋権益を過度に主張する国に対抗する」と強調したそうです。

中共側の范長龍・中央軍事委員会副主席は、このアメリカ軍の艦船の12カイリ内の航行を避けられないものと見て、10月17日に「中共が南シナ海で進める人工島の造成は、主に民間利用が目的であり、航行の自由に影響することはない」と中共主催の安全保障フォーラムの席上で述べています。

しかし中共は、10月9日の定例記者会見では華春瑩外務省報道官が、「いかなる国家も航行と飛行の自由の反保護を名目に、南沙諸島における中共の領空と領海を侵犯することを断固として認めない」と述べております。

ラッセンには、哨戒機P8AとP3が同行している可能性が高いそうです。ミスチーフ礁とスービ礁の付近での哨戒活動が行われるそうですから、明らかな作戦軍事行動になります。
中共から見れば、明らかな領海・領空への軍事的侵犯ですから、「断固として認めない」のであれば何らかの軍事行動をとらざるを得ないはずです。
もし何もしなければ、自らがこの海域を中共の了解ではなく、公海であることを認めたことになります。

17日の安全保障フォーラムでは、范長龍軍事委員会副主席は、「領土主権の問題において、われわれは軽率に武力に訴えたりはしない」などと述べ、「中共は一貫して、当事者間の友好的な話し合いで、相違や争いを解決しようと努めている」として、「中共軍が強大化すれば、世界平和を守る力も大きくなる。みだりに武力を用いることはしないし、弱い者いじめもしない。それは歴史が証明している」などと話しました。
「弱い者いじめ」と「歴史ねつ造」が国是のような中共であることは、もはや世界中が感じているはずです。

今年の7月、クアラルンプールで王毅外相が南シナ海問題について、「(当事国以外の)他国が口出しをすることは受け入れられない」などと述べましたから、話し合いで解決するなどと言うのが「嘘」であることは明白なのです。
「当事者間の友好的な話し合い」の当事者とは、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナムといった軍事的に弱い国家であり、南シナ海の領有を競っている国家群です。
しかしアメリカ、日本などの国家は、南シナ海を「公海」と国際法で規定していますから、当事者とは世界中の国家であり、話し合いは当然「国連」の海洋法条約で話し合うことを主張するでしょう。

海洋法条約の話し合いならば、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナムに中共を含めて、領海の線引きをすることが出来ます。それならばその線引きは国際的に守られるでしょう。
しかし、それを嫌っているのは中共であり、彼らの言う「当事者」との話し合いとは「弱いものいじめ」であることは明白ですね。
海洋法条約で領海の線引きがなされていない場合、そこは公海ということになります。中共が勝手に線を引いても、それが無効であることは常識です。それを近代国際社会と言うのですよ。

岸田文雄外相は、この人工島12カイリ水域に米海軍のイージス艦が派遣されたことに関し、「米軍の作戦についてコメントすることは控えたい」と話し、「開かれた自由な、そして平和な海を守るために国際社会が連携していくことが重要だ」とのコメントを出しました。
また、菅官房長官は「米国の作戦の一つ一つにコメントは控えたい」として、「日米間では緊密な情報交換を行っている」と述べ、「大規模な埋め立て拠点の構築と、現状を変更し緊張を高める一方的な行動は、国際社会の共通の懸念事項だ」と、中共の行為を批判しました。

中共の王毅外相は、「米艦船の航行が事実であれば、米国は軽挙妄動せず、トラブルを起こさないようにすべきだ」と反発しました。
軽挙妄動とは「軽はずみに分別なくみだりに行動すること」ですが、アメリカはよく考えて動いているようですよ。トラブルになるかどうかは、中共があくまで領海を主張し主権国として軍事行動を起こすか、それとも公海であることを認めて何もしないかどうかです。
フィリピンのアキノ大統領は、「米艦船の行動は航行の自由が保障された水域だ。何の問題もない」と述べ、暗にアメリカを支持したとか。

中共の外務省は、「中共は米艦船に対して法に基づき監視し、追跡と警告を行った」ことを発表し、「米側の行為は中共の主権と安全を脅かすものだ」と非難したそうです。事実かどうかは判りませんが。

東シナ海の尖閣周辺では、海上保安庁の追跡と警告を無視し、海警の艦船が毎日のように出入りしています。しかも「ここは中共の領海だ」などと叫んでいるわけです。
アメリカは「このパトロールは一回きりではなく定期的に行う」と発表していますから、ちょうど東シナ海と逆の状況が出来上がりますね。
「中共の主権と安全を脅かすものだ」とのことですが、東シナ海では「日本の主権と安全を脅かしているのは中共です。

アメリカ軍が人工島12カイリ内に入ったのは、習主席が英国訪問から戻った10月23日の直後でした。
これにどんな意味があるのか、アングロサクソンの国家が今後どのように動くのかは判りません。英国が中共をどのようにあしらうのか。IMFでSDR入りする人民元が、経済破綻を迎える中共にとってどう動くのか?
現在行われている「党第18期中央委員会第5回総会」で、反習派勢力が会議で主導権を握れば、南シナ海問題を含む執行部の外交方針に対する批判が噴出しかねない状況でもあるようです。
この時期に、アメリカ艦船の12カイリ内航行がどう影響するのか、目が離せませんね。

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