ロシアが「対日戦勝記念日」を9月2日と制定したのは今年の7月。
メドベージェフ大統領が、日本が東京湾上の戦艦ミズリーで第二次大戦の降伏文書に調印した昭和20年9月2日を事実上の対日戦勝記念日に定める法改正案に署名し、同法は成立したとのこと。
この成立に当たって、メドベージェフ大統領は「対日戦勝」という言葉をやめて「第二次大戦終結の日」としたとか。少し日本の反発を意識したようです。
しかし、もともとこの記念日制定は、北方領土を「わが国固有の領土」と明記した改正北方領土特措法が昨年成立したことへの報復だろう・・とするのが日本側の見方ですけど。
8月22日の産経「グローバルインタビュー」というコラムに、この記念日について、対日議連会長であるボリス・レズニク氏のインタビュー記事が掲載されていました。
レズニク氏は、「ただでさえ露日間に難しい問題(北方領土問題)があるのに、関係を複雑にしたくはない。われわれには第二次大戦の終結ということが重要だ」として「第二次大戦終結の日」という名称にしたことを強調しています。
さらに「我々(連合軍)はナチスドイツにもイタリアにも勝った。我々ではなく国際社会が勝ったのだ」と述べ、ロシアの軍人達は「西部の前線で戦争が終わっ た(ベルリン陥落)後、大きな戦力が極東に転戦させられた。彼らにとって、戦争は(対ドイツ戦争の終わった)5月9日ではない。戦争は9月に終わった。そ うしたイニシアチブを地方議会が支持し、長らくロシア議会でも検討されて最終的に法的な形式となった」という経緯を述べています。
そして8月15日、日本軍が天皇陛下の命により戦闘を停止したあとのソ連軍の侵攻については、「日本が自らナチス・ドイツとの枢軸国として行動したのだ。 われわれは戦争の終結がすべての国にとって悲劇の終わりだという立場だ」との見解、即ち停戦をネグレクトして「枢軸国に加担した日本の責任」を強調してい るようです。
北方領土の問題に関しては、「露日間に横たわる困難な問題」として「私は対日議連を率いており、長らくいわゆる北方領土問題について議論してきた。(日本側との)交渉でこの問題が取り上げられないことはない。」と辛い胸のうちを語っています。
質問者が「ロシアは最近、極東での軍事演習で択捉島の演習場を使用しました。日本側は日露関係を悪化させる要素となっている・・・」と述べたことに対して は、「いかなる国も自らを守らなくてはならず、軍は訓練を行わなくてはならない。大規模な演習は世界的に普通のことであり、いかなる脅威でもない。」とし て、「もし自国への領土要求があるのなら、それがファンタジーだとしても、軍人は潜在的に紛争となりえるすべての原因を検討しなくてはならない。紛争の原 因となる問題は取り除かねばならない」と答えています。
この答え方などは、日本の尖閣列島と沖縄に対する中共の脅威にも使えるものですね。
そして質問者が「第二次大戦終結記念日を9月2日に制定しましたね。しかしソ連軍が(北方四島の)最後の島を占拠し終えたのは9月5日でした。矛盾ではないでしょうか?」と質問したことに対しては「ノーコメント」として返事をしませんでした。
ロシアが「第二次大戦終結記念日」を9月2日と制定してくれたので、北方4島占領完了の9月5日とのあいだに矛盾が生まれているようです。これは今後の北方4島返還交渉の材料として使えるかも知れませんね。
このインタビューでレズニク氏は、「われわれは日本との経済関係に満足していない。われわれが関心をもつ高度技術やイノベーション(革新)技術は共有され ておらず、日本側は接触にこない。」と述べ、「日本はやや高慢に、ロシアなしでもやっていけると考えている。」と不満を漏らしています。
そして「今日の日本はこうしたテクノロジーをもっている唯一の国ではない。韓国も中国もたいへんな進歩を遂げており、ロシアはこれらの国とたいへん集中的で深い経済的協力をしている。」と脅しもかけています。
このボリス・レズニク氏、ロシアでは親日派とのこと。
北方領土の問題は、二次大戦終結後に英米が主導する連合国・自由主義側で、共産主義国と日本が協調しないようにするための「楔」として、あいまいにしておいたもの。
冷戦時代、この楔は非常に有効でした。しかし、この冷戦はすでに過去のもの。楔だけが日露間に横たわっている問題だという認識は持っているのでしょうか?
いずれにしても、ロシア側の認識と思惑が良くわかるインタビューだと思います。このインタビューを参考に、日本側の北方領土奪還戦略を再考することも重要ではないでしょうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿